松橋事件、無罪確定へ 再審初公判、殺人立証せず結審 熊本地裁

西日本新聞

 1985年に熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で男性が殺害された松橋事件で、殺人罪などで服役した宮田浩喜さん(85)の裁判をやり直す再審の初公判が8日、熊本地裁(溝国禎久裁判長)であった。検察側は殺人罪についての有罪立証をせず、弁護側は無罪を主張して即日結審した。判決は3月28日。無罪が言い渡され、確定する見通し。

 宮田さんは認知症を患い、高齢者施設でほぼ寝たきりで出廷しなかった。

 冒頭陳述で、検察側は唯一の直接証拠だった自白の信用性を否定した再審開始が確定したことを挙げ、「新たな立証はせず、裁判所の適切な判断を求める」と説明。その上で、自白調書や凶器とされた小刀など約200点の証拠を調べるよう求めた。

 溝国裁判長は「再審請求審での経緯を踏まえると調べる必要がない」とし、約150点を却下。遺体の状況など殺人事件であることを示す証拠のみを採用した。

 殺人など重大事件の再審公判で検察側が有罪立証を断念したケースはあるが、裁判所が罪を証明する証拠を調べないのは異例。再審に向けた検察側、弁護側との3者協議で、地裁は宮田さんの体調に配慮し「迅速に審理を終わりたい」との方針を示していた。溝国裁判長は、再審開始を認めた2016年の熊本地裁決定でも裁判長を務めた。

 弁護側は「犯人と被告人を結びつける証拠は何一つ存在しない。速やかな無罪判決を求める」と述べた。

 一方、検察側は、85年に自宅で拳銃と実弾を所持したとする銃刀法違反と火薬類取締法違反の罪は懲役2年を求刑。弁護側は執行猶予付き判決を求めた。

 弁護団は12年に熊本地裁に再審請求。宮田さんが「シャツの左袖を切り取って小刀の柄に巻き、犯行後に燃やした」と自白し検察の証拠品から見つかった左袖や、小刀と傷口が一致しないとする法医学者の鑑定書を新証拠として提出した。

 地裁は16年に「自白は重要部分に客観的事実との矛盾が存在する疑義があり、信用性が揺らいだ」として再審開始を決定。昨年10月に最高裁で確定した。

【ワードBOX】松橋事件

 1985年1月8日、熊本県松橋町(現宇城市)の民家で男性=当時(59)=が血を流して死亡しているのが見つかった。男性の将棋仲間だった宮田浩喜さんが「刃物で刺した」と殺害を認めたため、県警が同月20日に逮捕。宮田さんは公判途中から「自供の大部分は偽りだった」と否認に転じ無罪を主張したが、熊本地裁は自白に任意性、信用性があると認め懲役13年の判決を言い渡した。90年に最高裁で確定して服役、99年に仮出所した。2012年3月、成年後見人の弁護士が再審請求。18年10月に最高裁が再審開始を決定した。

地裁、早期決着を優先 自白調書や凶器調べず 松橋事件再審結審

弁護団「無罪です」30分で結審 松橋事件再審初公判

=2019/02/09付 西日本新聞朝刊=

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