昭和の時代に「リンゴの唄」「ちいさい秋みつけた」など、叙情あふれる愛唱歌を多く残した作詞家のサトウハチロー…

西日本新聞

 昭和の時代に「リンゴの唄」「ちいさい秋みつけた」など、叙情あふれる愛唱歌を多く残した作詞家のサトウハチロー。自作に一つだけ嫌いな歌があった。「うれしいひなまつり」である

▼2番の〈お内裏様とおひな様 二人ならんですまし顔〉に難があった。ひな飾りは宮中の結婚式を再現したもの。内裏は御所のことで、男びなと女びなを一対で内裏びなや内裏様と呼ぶ。さらに言えば、おひな様は三人官女なども含めたひな人形の総称。歌詞は二重に間違っていた

▼誤りを恥じたハチローは「この歌を捨てたい」とまで言ったそうだが、80年以上歌い継がれ、今や日本文化を象徴する名曲だ。男びなをお内裏様と称しても、目くじらを立てることはなかろう

▼九州はひな祭りが盛んで、近年は「ひなの国 九州」という言い方も。箱びな、流しびななど各地域に特徴的な風習が残る。1番手は柳川の「さげもん」か。色鮮やかなまりと細工物を51個つるしている。同じ筑後には厚紙や綿を布でくるみ貼り合わせる「おきあげ」も。麻糸や竹で作る鹿児島の「糸びな」も素朴だ

▼旧産炭地の飯塚でひなの絵を描いた「ひな軸」を見た。ひな壇を買えないヤマ男が娘のためせめてもと、狭い炭鉱住宅の壁に飾ったそうだ

▼立春も過ぎ、ひなの国ではこの連休ごろから催しが花盛り。あかりをつけましょ ぼんぼりに。ハチローならではの雅(みやび)な歌が聞こえてくる。

=2019/02/10付 西日本新聞朝刊=

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