石牟礼さん足跡しのぶ 水俣と福岡市で一周忌の集い

西日本新聞

石牟礼道子さんの遺影を飾った会場で、作品を朗読する胎児性患者の加賀田清子さん(右から2人目)たち=10日、熊本県水俣市 拡大

石牟礼道子さんの遺影を飾った会場で、作品を朗読する胎児性患者の加賀田清子さん(右から2人目)たち=10日、熊本県水俣市

「暗河」を手に石牟礼さんとの思い出を振り返る前山光則さん(右)。左は米本浩二さん=10日、福岡市中央区

 水俣病を告発した「苦海浄土(くがいじょうど)」などで知られ90歳で亡くなった作家石牟礼道子さんの一周忌を迎えた10日、熊本県水俣市と福岡市で追悼の集いがあった。水俣病患者に寄り添い、日本文学に大きな足跡を残した石牟礼さんを、患者や作家、市民らがしのんだ。

 一般社団法人「水俣病を語り継ぐ会」=吉永理巳子(りみこ)代表=は、水俣市で石牟礼さんの著作などの朗読発表会を開き、胎児性患者の加賀田清子さん(63)が支援者らと出演。石牟礼さんが最後に加賀田さんと会った際の喜びを表現した文章を感極まりながら読み上げ、「(道子さんが)会場に来て聞いてくれると思って心を込めた。道子さんの分まで水俣病のことを伝えていきたい」と語った。絵本「みなまた 海のこえ」の群読もあり、吉永代表は「亡くなって改めて偉大さを感じると同時に、いつも道子さんに問い掛けられている気がする」と話した。

 福岡市のギャラリーでは人柄や作品を語る講演会が開かれた。石牟礼さんが評論家渡辺京二さんらと1973年に創刊した「暗河(くらごう)」を編集した前山光則さん(71)は「晩年はパーキンソン病に苦しみ『生きるのに飽き飽きした』と話した一方、『書きたいことはいっぱいある』とおっしゃった」と振り返った。石牟礼さんの評伝で昨年読売文学賞を受けた米本浩二さん(58)は、長年執筆を支え公私ともに伴走した渡辺さんとの関係を、「(お互いの)家庭は大切にしながら、『もうひとつのこの世』を一緒に求めようという約束があった」と明かした。

 個人編集の世界文学全集に苦海浄土を選んだ作家池沢夏樹さん(73)も会場を訪れ、「人間に対する深い共感力があった。だから、患者さんの魂と融合した深い作品となった」と石牟礼文学をひもといた。

=2019/02/11付 西日本新聞朝刊=