【日日是好日】羅漢寺の猫ただいま13匹 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 冷え込んだ夜、本堂前で夜空を見上げると満天の星が輝いていました。中でもひときわ目立つオリオン座を眺めると、その存在感に感動します。

 羅漢寺での生活に、最近ちょっとした変化があります。それは共同生活者として猫が増えたことです。3年前に飼っていた猫が突然2歳の若さで他界し、2年前には13年間共に暮らした2匹の犬が相次いで旅立ちました。これを機に、自分を見つめる修行の妨げになると考え、あえて動物を飼うことをやめようと決心しました。

 ところがちょうどそのころ、おなかの大きな黒猫が突然現れ、ほどなく子を産みました。しばらく育てていたのですが、ある日こつぜんといなくなりました。しばらくして、その母猫は少し大きくなった子猫を連れて戻ってきたのですが、彼女のおなかはまた大きくなっており、「頼む」とばかりに、子猫たちを置いてどこかに行ってしまいました。

 またある日、別の妊娠した猫が現れ、麓で出産すると4匹の子猫を連れて戻ってきました。助けを求められ餌を与えたこともあり、気が付けば猫は十数匹になっていました。このままでは猫寺になってしまうと、動物愛護団体に相談することにしました。

 愛護団体は、猫の捕獲と避妊・去勢手術の手助け、もらい手の世話をしてくださいます。彼らの協力を得て、羅漢寺の猫は昨年の秋に手術をほぼ終わらせ、ワクチンを打ち、現在13匹に落ち着きました。

 最初は、けんかをしたり私を威嚇したりしていましたが、次第に懐いてきました。今では私の部屋を占拠し、段ボール箱のねぐらにそれぞれが寝ています。外で生活する猫にも、特製の部屋をつくりました。

 ほとんど野生に近い暮らしであるため、母猫は毎日獲物を自慢げに捕まえてきます。これが目下の悩みです。今までに一番驚いたのはウサギです。最近は毎晩夜中に、ネズミやさまざまな獲物を律義に私の枕元に持ってくるので寝ていても何だか緊張する毎日です。

 予想外の13匹との共同生活ですが、彼らと暮らす際に私は覚悟をしました。それは、「13匹の命と向き合おう」ということです。いずれ来る別れの時も含め、彼らを擬人化することなく1匹1匹の命として向き合おうと思います。

 邪念のない「無心」な猫や犬に人々は癒やされますが、私は「無心」な猫たちに多くを学ばせてもらおうと決心しました。広大な宇宙の存在に気付くと、人間の存在はちっぽけに感じます。宇宙に比べると、私や猫の命は露のごとく、夢の如くはかないものです。その一瞬の命を精いっぱい共に生きる運命共同体であり、愉快な仲間でありたい。

 またネズミを持って来ました。案の定自慢顔です。ネズミが苦手な私は、仲間のおかげで少しは克服したようですが、しかし酷な修行だと思うのです。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/02/10付 西日本新聞朝刊=

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