うつ病の「応急処置」5原則 部下のイエローサインに気付いたら…

西日本新聞 医療面

加藤隆弘講師 うつ病が疑われる人への接し方を学ぶ九州大病院の研修医や医学生たち

 うつ病にも「応急処置」を-。九州大病院(福岡市)精神科神経科などが、精神的な不調を抱える人に、早期に適切に関わるための企業向け研修プログラムを開発した。メンタルヘルスの問題による長期休職や退職の増加は企業にとっても大きな損失となる。早期発見、早期治療につなげ、重症化を予防するための研修の普及を呼び掛けている。

 うつ病は気分障害の一種で、不安や自信喪失などとともに、不眠や食欲不振、倦怠(けんたい)感などの身体症状が現れる。がんや慢性疼痛(とうつう)などの疾患、失業や離婚、長期間の介護など、さまざまなきっかけで発症する。

 厚生労働省の調査では、うつ病を含む気分障害の患者は1996年の43万3千人から、2014年は111万6千人と大幅に増加。生涯にうつ病を患う人の割合は3~7%、成人の4人に1人が精神的な問題を抱えるという調査もある。

 ただ、日本では「個人的な弱さ」「自己管理が悪い」といった偏見が強い上、精神科のイメージが悪く、治療を受けない人も多い。周囲も見て見ぬふりをして、受診が遅れる傾向があるという。

 そこで、九大病院精神科神経科の加藤隆弘講師らの研究グループは07年から、オーストラリアで一般市民が受講する研修「メンタルヘルス・ファーストエイド」の導入を図っている。うつ病の基礎知識と初期対応を計12時間で学んでもらう内容だ。研究グループは日本人向けの短時間プログラムを作成し、精神的な問題を抱える人に接する機会が多い医療従事者、患者の家族などを対象に充実させてきた。

 今回開発した企業向けのプログラムは約2時間。まず(1)声を掛け、リスクを評価(2)決めつけず、批判せずに話を聞く(3)安心につながる支援と情報を提供(4)専門家のサポートを受けるよう勧める(5)その他、職場の取り組みなどのヘルプ、サポートを勧める-の五つの原則を学んでもらう。

 その上で、ぼんやりしたり、ミスや遅刻が増えたりといったイエローサインを発している部下に、上司がどう接するかのロールプレイを行う。「よく眠れてる?」「最近どう?」「何か困ったことがあるんじゃないですか?」などの声の掛け方▽飲みに誘う、一人で残業している時に話し掛ける、部下全員に個別面談をするなどの声掛けのタイミング▽静かな場所で、適度に近い距離を取るといった話の聞き方-を伝授。最後に、産業医や保健師、心療内科医、保健所などの相談機関を紹介するという流れを実演する。

 加藤講師は「どう声を掛けていいのか分からない人、声を掛けた後の接し方が分からない人も多い。ロールプレイを繰り返し行うことで、声掛けの『型』を覚えてほしい」と話す。

 この研修を試験実施した福岡県内のメーカーでは、受講者の多くがうつ病への偏見が減り、不調を抱える人に声を掛ける自信が生まれたという。加藤講師は「やけどはすぐ冷やす、心臓発作で倒れたら自動体外式除細動器(AED)を使うなどの応急処置が決まっているように、うつ病も一定のパターンで声を掛け、話を聞き、専門家につなぐという初期対応を定着させたい」としている。

=2019/02/04付 西日本新聞朝刊=

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