僕は目で音を聴く(37)海外旅行が好きな理由

 私は旅行が大好きで、特に1人で海外に行くのが趣味です。昔は聞こえないことを理由に、「なにかあっては責任が持てない」と旅館から宿泊を断られることもあったそうです。当時の聴覚障害者が「自分で行動できる」と、頑張ってアピールしたおかげで今があるんだと、しみじみ感謝しています。

 聴者からよく言われるのが「聞こえなくても海外旅行できるのがすごい」「どうやってコミュニケーションをとるの?」ということ。でも考えてみてください。海外に行けば現地の言葉が話せず、意思疎通が簡単じゃないのは聴者もろう者も同じです。向こうも日本語が分からないのでお互いに工夫します。日本人の聴者だと恥ずかしがってなかなかやらないような大げさな身ぶり手ぶりも、外国の人は平気です。聞こえない私たちにとってもジェスチャーは日常のことなので、苦になりません。

 また日本語を話せる外国人でも、日本人よりはゆっくりした口調になるため、聞こえなくても唇の形を読んで話が理解しやすくなります。つまり、海外にいると、より聴者と対等な立場になれる気がするのです。

 インドネシアを旅行中、列車の中で寝ていた際、スマートフォンを盗まれたことがあります。私は大急ぎで現地の警察署に向かい、警官に、スマホの位置情報をたどって捜してほしいと頼みました。iPad(アイパッド)の翻訳ソフトも使って必死に説明しました。気持ちが通じたのでしょう。応援まで呼んでくれて、私と一緒に一生懸命、探してくれました。「外国人は命の危険もあるから」とずっとフルフェースのヘルメットをかぶるよう渡され、正直、暑さには閉口しましたが…。

 結局、見つかりはしなかったのですが、もしかしたら他の“おとなしい”日本人とは違い、物おじしない私の真剣な態度に、心の壁を取っ払ってくれたのではないかなあと想像しています。言葉の壁は、心さえあればどこでも突き破ることができるのではないでしょうか。みんな、同じ人間なのですから。

 (サラリーマン兼漫画家、福岡県久留米市)

 ◆プロフィール 本名瀧本大介、ペンネームが平本龍之介。1980年東京都生まれ。2008年から福岡県久留米市在住。漫画はブログ=https://note.mu/hao2002a/=でも公開中。

※平本龍之介さんによる漫画「ひらもとの人生道」第1巻(デザインエッグ社発行)が好評発売中!

=2019/02/07付 西日本新聞朝刊=

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