「近くて便利」だけでは 経済部 下村 ゆかり

西日本新聞

 米航空大手のデルタ航空が5月のゴールデンウイーク(GW)明けに、福岡-ホノルル線から撤退することが明らかになった。九州からハワイ行き直行便がなくなることになり、旅行者はもちろん、旅行代理店からも悲鳴が上がっている。

 福岡市内に店舗を構えるある旅行代理店によると、ハワイ観光は、今も変わらぬ「海外旅行の王様」という。お盆や正月、GWなどの行楽期には常にトップクラスの人気を誇る。リピーター率が7~8割と高いのが特徴で、美しいビーチの景観はもちろん、優雅なプールを備えたホテル、レストラン、ショッピングモールなどリゾート施設がそろう。買い物、食事や山登りなどカップルからファミリーまで客層を問わず「ハワイに行けば誰でも何でも楽しめる」のが人気の理由という。

 その代理店では、ハワイへの旅行客は窓口カウンターでおおむね1~2時間かけて、飛行機やホテル、追加プランの設定などを練り上げる。中には結婚式も含めた計画を立てる客もいる。1人当たりの旅行代金は数十万円と、決して安くはないハワイ旅行。客も従業員も、並々ならぬ情熱でプランを作り上げているのに、それがデルタを利用してGW以降に旅行を予定していた客は、路線撤退ですべて白紙になってしまうわけだ。

 「1人当たり数時間の応対をもう1回、それを数百人分ですよ。ただでさえGWが10連休となって、窓口はパンク状態なのに…」。代理店の社員は頭を抱えていた。

 「欧米線など長距離路線が弱い」と指摘されてきた福岡空港。図らずも懸念があらわになったということか。新規路線の誘致は、1路線を開拓すれば終わり、ではない。機材繰りや整備、人員配置などの効率を考えれば、1路線より2路線、3路線…と多いほどよい。それだけの路線を誘致し、なおかつ高い搭乗率を維持できるのか。各航空会社のそろばん勘定はシビアだ。

 福岡空港の特徴の一つである「都心から近くて便利」は空港にとっても福岡人にとっても誇りだ。だが「近くて便利。それだけ」と判断されれば、空港の、そして福岡という街の発展は望めない。

 福岡空港は4月から完全民営となる。新運営会社は米サンフランシスコ線の開設を目指すなど欧米路線拡充を図る方針だが、楽観はできない。空港だけでなく地元企業や行政に寄せられる期待は重い。

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 ▼しもむら・ゆかり 西南学院大卒。2006年入社。地域報道センター、筑豊総局を経て現職。流通、製造業、金融などを担当して現在は運輸担当。

=2019/02/16付 西日本新聞朝刊=

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