【地域の針路】AIに託す農村の未来 人手不足に自動収穫で対応

西日本新聞

参加者が熱い視線を送る中、アスパラガスを摘み取っていく収穫ロボット=佐賀県鹿島市 拡大

参加者が熱い視線を送る中、アスパラガスを摘み取っていく収穫ロボット=佐賀県鹿島市

 農村の高齢化や担い手不足を救う切り札として今、ロボット技術が注目を集めている。果たして、農業に革命をもたらすか-。

 餌をついばむ鳥のように、細長いアームが地面のアスパラガスに狙いを定め1本ずつ摘み取っていく。走行用ベルトで進む野菜収穫ロボット。開発したのは神奈川県のベンチャー企業「inaho」。1月、佐賀県鹿島市に進出した。

 お披露目式には、導入を検討する県内の農家たちが集まった。「1本で15秒ほどかな。AI(人工知能)で収穫に適した茎を探すので、畑に置いとけば昼夜を問わず働いてくれますよ」。担当者の声が弾む。

 「うちのハウスで実験した時よりも格段に動きが速くなってる」。同県太良町の安東浩太郎(39)が表情を崩した。豊かな自然にほれこみ、耕作放棄地でアスパラ栽培を始めて6年になる。しかし収穫作業の重労働や人手確保の難しさは想像以上だった。作業の約6割を占める収穫を自動化できれば営業や就農希望者探しにも時間を使える。ロボの派遣料は収穫額の15%。「1台でパート2人分を担えれば、十分利益が出る」と思い描く。

 農林水産省によると、全国の農業就業人口は1990(平成2)年からの25年間で約6割減り平均年齢は66歳を超えた。AIを使ったスマート農業に注がれる視線は熱く、同社にも全国から導入効果についての問い合わせが急増している。九州では佐賀を中心に年内に30台の導入を目指す同社。しかし作物に傷がつかないか、ハウスの湿度や暑さに精密機械が耐えられるのかなど作業能力に半信半疑の農家も少なくない。それでも福岡県大川市の梅崎英俊(49)は期待を抱く。「どこまで使えるか分からんけど、これからますます人が足らんくなる以上、頼りたくなる」

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 小型無人機ドローンによる農薬散布、ハウス環境の自動制御、無人の茶摘み機…。自動化、省力化への実験や導入が九州で急速に進む。だが越えるべき課題は多い。

 同県みやま市は昨年12月、特産のミカンを農家の集落から選果場まで「自動運転」で運ぶ国の実証実験に臨んだ。複数のブランドを持つ「山川みかん」は稼げる産品だが、地元JAの部会員は高齢化で毎年10人ほど減り続ける。高齢で運転免許を返納しても、農作業が続けられる地域にというのが市の狙いだ。

 段々畑が連なる山間地の伍位軒(ごいのき)地区から市街のJA支所まで約6キロ。路上に埋めた電磁誘導線を頼りに小型電気自動車がミカンを載せた台車をけん引する。最高時速12キロ程度で約25分。住民の足としても活用が期待される。しかし-。細い山道での車のすれ違いなどでは安全確保のために手動で運転せざるを得ない。実用化には技術的な壁がまだある。「現状では人手が必要ということ。引き続き実現の可能性を探りたい」と市担当職員。

 「収穫期は一番人手が必要。自動運転は本当に助かるんだがなあ」。ミカン畑を前に、区長の山下勝己(67)は将来の“果実”への期待を口にした。 =敬称略

=2019/02/18付 西日本新聞朝刊=

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