中国へ「売られる花嫁」被害相次ぐ 北朝鮮やベトナム 背景に一人っ子政策 (4ページ目)

西日本新聞

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 李さんの逃亡を支援した韓国の脱北者支援団体「北朝鮮人権市民連合」の金英子(キムヨンジャ)事務局長によると、昨年1年間で中国へ人身売買された北朝鮮の女性や子ども計230人を救出した。1996年以降に救い出した脱北女性らは累計千人超に上るが、あくまでも「氷山の一角」という。

 中国当局は脱北者を見つけた場合、北朝鮮へ強制送還する措置をとっている。送還された脱北者は凄惨(せいさん)な拷問や強制労働が待っているため「売られてきた花嫁」は中国当局に保護を求めることもできず、被害は表に出づらいのが実態だ。

 中国吉林省の農村へ花嫁として売られた咸鏡北道明川(ミョンチョン)出身の崔今淑(チェクムスク)さん(44)は2003年、中国当局に捕まり、北朝鮮の収容施設に送られた。「食事はおかゆだけ。看守の機嫌が悪ければそれも与えられず、1週間水も飲ませてもらえなかった」。看守にレイプされた脱北女性が堕胎した赤ん坊の処理を手伝ったこともあるという。「売られた先の中国での生活は苦しいけど、北朝鮮に送還されるよりずっとましだ」

 それでも中国に売られる脱北女性の話を聞くと「あの頃の自分と重ねて胸が締め付けられる」。韓国で暮らす今、一人でも多くの女性が救出されるよう毎月1万ウォンを脱北者支援団体に寄付しているという。

 ●「一人っ子政策」背景に 男性人口が女性上回る

 「売られる花嫁」は北朝鮮出身者に限らない。中国メディアは1月下旬、河北省〓(〓は「刑」の「りっとう」部分が「おおざと」)台市の男性に売られたベトナム人女性2人が救出されたと報じた。2018年2月には中国当局がベトナムと国境を接する雲南省の集落で33人のベトナム人女性を救出、人身売買組織の78人を逮捕したと発表した。

 ベトナム国営メディアによると、同国内では2011年から17年までの約7年間に子どもも含め人身売買の被害者は6千人近くに上った。被害者の多くは貧困層で山岳地帯に住む少数民族の女性も多いとされる。他にもラオスやミャンマー、モンゴルの国境周辺に住む女性が狙われるなど被害は後を絶たない。

 背景にあるのは中国の男女数の格差だ。人口統計によると、18年末時点で男性が女性を3164万人上回った。1979年から2015年まで続いた「一人っ子政策」の影響で、女児より男児が好まれた結果だ。

 「結婚適齢期」の中国人女性は快適な生活と高所得の男性を求めて都市部に集中するため、農村部は花嫁不足が深刻化。中国人女性を花嫁に迎える準備金より近隣諸国の女性を買い求めた方が割安なこともあり、人身売買が横行している。

 こうした状況について、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(本部・米ニューヨーク)中国担当調査員の王松蓮さんは「中国政府も人身売買の取り締まりに力を入れているが、対応は十分ではない。脱北女性を北朝鮮に強制送還するなど保護の視点に欠けている。拷問が懸念される場合は難民として受け入れるべきだ」と指摘する。

=2019/02/18付 西日本新聞朝刊=

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