学校図書館のハテナ?(3)歩み 識者の見解を交え

西日本新聞

学校司書の必要性について語る福岡女子短期大の永利和則特任教授 拡大

学校司書の必要性について語る福岡女子短期大の永利和則特任教授

青春出版社刊「最新脳科学でついに出た結論『本の読み方』で学力は決まる」

 自治体によりばらつきがある小中学校の学校司書。背景には各自治体の考え方以外にも国の予算配分が関係している。近年、配置校は全国的に増加傾向にあり、読書が学力向上につながるという調査結果も示されている。図書館司書、館長を経て、福岡女子短大の永利和則特任教授(図書館学)の解説を交えながら学校司書の歩みとこれからを探った。

自治体で違う学校司書の数

 学校図書館の歴史は古く、日本学校図書館史(塩見昇著)などによると、1902(明治35)年、京都市の尋常高等小学校に寄付金で設置された児童文庫が始まりとされる。

 本格的な浸透は戦後で教育の自由主義化により急速に拡大した。教員有志により発足した全国学校図書館協議会(現在は公益社団法人)も、設置を推進するための公的保障を求める約100万人の署名を国会に提出。学校教育充実のため設置を義務付けた学校図書館法の53年の成立に結実した。

 学校司書については、法制定以前から一部の学校に置かれ、多くはPTA会費などで雇用。その後、いったんは行政の直接雇用が進んだものの、80年代以降の行革などの対象になり急減した。「司書のいない学校では図書館が本の倉庫になった」と永利さん。「子どもだけで好き勝手に利用させないよう昼休みや放課後は施錠。小学校では図書の時間だけ開けるような状態だった」

 さまざまな書物を通し、教科書以外の世界に触れることのできる図書館。子どもの学びの機会を確保しようと保護者有志がボランティアで立ち上がり、鍵の開閉などを始めた学校もあるが、できることには限界があったという。

交付税算定基準が足かせに

 図書館への専門職員配置が見直されるようになったのは2000年前後。この時期の学習指導要領改定で小中学校では、自ら課題を見つけて答えを探る総合的な学習の時間が導入され、図書館の活用が呼び掛けられるようになった。

 また、活字離れによる子どもたちの読解力不足が深刻化。各学校で朝の読書運動が始まったほか、12学級以上の学校には司書教諭を置くよう義務付ける法改正も行われた。

 国は12年度、公立小中学校における各自治体への地方交付税の算定に「2校に1人で約100万円」という学校司書の配置基準を規定。さらに15~17年度に配置の努力義務やガイドライン策定、算定基準の増額などを次々と打ち出した。

 この結果、国公私立を合わせた小中学校の司書配置率は上昇。16年度は小学校59・2%、中学校58・2%で10年前からは23・0~26・3ポイント増えている。高校は10年前から4・6ポイント減り、16年度は66・6%だった。

 ただし、常勤は高校が5割超で、小中学校は2割に満たない。自治体の判断で配置数などは決められるものの、永利さんは「地方交付税の算定を基準に配置している自治体が多いためであり、足かせのようになっている」と問題視する。

「読書なし」では学力延びず

 読書習慣と学力との相関関係は各種調査で明らかになってきている。

 18年発行の「最新脳科学でついに出た結論 『本の読み方』で学力は決まる」(青春出版社)には、仙台市教育委員会が17年度に行った「標準学力調査」の結果と、学習習慣などの関係が示されている。

 小学5年から中学3年までの約4万人を調査したところ、小学校高学年で最も成績が良かったのは「勉強30分~1時間」「読書1時間以上」「睡眠8時間以上」、中学生は「勉強2時間以上」「読書1時間未満」「睡眠6~8時間」のグループだったという。勉強時間が長くても全く読書をしなければ、ほぼ平均点以下だった。

 監修した東北大加齢医学研究所の川島隆太教授らは「小学生のうちはたくさん読書をして幅広い知識や視野を身に付け、豊かな感受性を養う方が学力に結びつく」と説明する。

 永利さんは「教育現場の実感が証明された」と話し、子どもたちの読書案内人である学校司書の重要性を強調。一方で、ジャンルに限りのある学校図書館に、公立図書館から図書資料を提供するなど連携の必要性も訴える。「子どもたちが社会で定着している知見を調べ、新たな価値を見いだす主体的な学習には本を使うしかない」。学校図書館の充実が、全ての子に平等な教育の機会を与えることにつながると思っている。

=2019/02/17付 西日本新聞朝刊(教育面)=