「障がい者とアート」つなぐ 市民らが実践企画 福岡女子大&宗像市「アートマネジメント講座」

西日本新聞 ふくおか都市圏版

自作のお面をかぶりアーティストと一緒に踊る子どもたち。アートマネジメントは両者のつなぎ役として全体に目配りをすることが求められる 拡大

自作のお面をかぶりアーティストと一緒に踊る子どもたち。アートマネジメントは両者のつなぎ役として全体に目配りをすることが求められる

用意した毛糸、色紙、テープなどを使って自分のお面を作る子どもたち 落語会の様子。手前左側の要約筆記者が内容を入力し、右の画面に文字が現れる(宗像市、福岡女子大提供)

 「障がい者とアート」をテーマにしたイベント2件が2月、宗像市であった。障害児通所施設での創作活動と、障害のある人も楽しめる落語会。企画したのは、地域に文化を根付かせる役割を担う「アートマネジメント」養成講座を受講した市民たちだ。この講座は福岡女子大(福岡市東区)と宗像市の連携事業で、誰にとっても優しいまちづくりを担う多様な人材を育てようという試み。受講生たちは何を感じ取ったのか-。

お面作成-音楽聞きイメージ膨らませる

 「ワサワサー」「イエー」。アフリカのあいさつを交わしながら、太鼓を打ち鳴らしてアーティスト3人が教室に入ってきた。2日、宗像市障害児通所支援事業所「げんきっこくらぶほっぷ」で開かれた、受講生によるワークショップ。子どもたちはまず、アーティスト「あふりかじゃんぐる」の音楽を聞き、イメージを膨らませる。リズムに合わせ足踏みする子、音が苦手なのか両手で耳をふさぎ、目をつぶる子…。そして、アフリカのお面づくりに挑戦した。

 カラフルな毛糸や色紙、テープを厚紙に貼って顔を作っていく。紙をちぎることにずっと熱中したり、素材を触って丸めるのを繰り返したり、一人一人違う個性を持つ子どもたちの作業を、受講生たちが施設スタッフとともに手伝っていった。最後は完成したお面をかぶり、保護者や住民も一緒にアフリカのリズムで輪になって踊った。

 終了後の反省会では、「子どもに寄り添うことは大事だけど、自身が入り込みすぎてしまっているかも」という意見が出た。出演者と子どもを橋渡ししながら、時間を計って記録を取り、全体を見渡して運営する腕がアートマネジメントには求められる。

 受講生の一人、有座まさよさんは、一枚の紙で立体的建物を表現する「折り紙建築」のワークショップの主宰者。実践のプラスになればと受講し、「俯瞰(ふかん)した目を持つためには大変な素養が必要と分かった。自分の立ち位置はどこなのか、勉強するほど葛藤は深まりますね」と振り返った。

落語鑑賞-画面に要約筆記など環境づくり

 一方、10日に宗像市の文化総合施設「宗像ユリックス」で催されたのは、落語会「みんな寄って 百円寄席」。落語愛好家グループ「宗像落語会」のメンバーが出演し、観客40人の半数は聴覚や視力、精神、身体に障害のある人たちが集まった。

 受講生たちは、障害の特性に合わせた環境づくりに取り組んだ。目の見えない人には寄席の空間をイメージしてもらおうと、開演前に演者が座る高座を触ってもらった。聴覚障害者にはパソコンで文字を入力し、画面に表示する要約筆記の用意をした。演者も見て分かりやすい、伝わりやすいネタを選ぶなど協力。終了後、「久しぶりにこんなに笑ったよ」と観客に声を掛けられ、受講者たちはほっとした表情を浮かべた。「素晴らしいプロジェクトに感謝しています。要約筆記の手配大変だったと思います」「今度は小演劇や、映画を見てみたい」といった感想も寄せられた。

多様なケース、対応に課題も

 この日の反省会では、「早口で話す落語には要約筆記はなじまないので、手話で表現できないか」という声もあった。ただ、後天性の聴覚障害者の中には手話を学ぶ機会がなかった人もいる。受講生の一人は「多様さにどう対応するか。私たちがもっと場数を踏んで知ることが必要なんだろう」と話した。

 宗像市の担当者は「既製品でなく、個別に作り上げる芸術イベントは時間も労力もかかるが、やりがいも大きい。担い手が増えることで、障害者も含めてもっと多くの人が芸術に触れる機会が増えれば」。来年度以降、より実践的な養成講座を計画中という。

=2019/02/20付 西日本新聞朝刊=

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