被災患者3割不眠症疑い 熊本地震、くわみず病院調査 「医療費が負担」うつ傾向

西日本新聞

益城町の仮設団地集会所で被災者から健康面の不安を聞く東熊本病院の永田晃平副院長 拡大

益城町の仮設団地集会所で被災者から健康面の不安を聞く東熊本病院の永田晃平副院長

 2016年4月の熊本地震を経験した通院患者の3割以上に不眠症の可能性があり、1割超にうつ状態の疑いがあることが、くわみず病院(熊本市中央区)の調査で分かった。医療費を経済的負担と感じている人は、うつのリスクが高いことも判明。同病院は「被災者の生活再建が、健康面での復興につながる」として、医療費の自己負担軽減などを求めている。

 アンケートは昨年8~9月、通院患者702人に実施し、417人から回答を得た。98%が熊本地震を経験しており、自宅が全壊や大規模半壊と判定された人が102人(24%)。一部損壊は182人(44%)、損壊なしは123人(29%)だった。

 調査は、不眠を判定する国際基準「アテネ不眠尺度」(AIS)と、うつや不安障害といった心理面の不調を測る「K6」という二つの指標を用いた。AISが6点以上で「不眠症が疑われる」、K6は9点以上で「うつ病や不安障害の可能性が高い」と判定される。調査では144人(34・5%)が「不眠症の疑いがある」に該当し、「うつ状態の疑いがある」は58人(13・9%)だった。

 熊本地震で自宅が全半壊した国民健康保険加入者らを対象にした医療費の自己負担免除制度は、国が財政支援する特例措置の終了に合わせて2017年9月末に打ち切られた。同病院は、医療費負担や収入の増減による精神面への影響も調べた。医療費負担が「きつい」と感じている人は、AISとK6がいずれも9点と高かったという。

 池上あずさ院長(55)は「高血圧などの持病があるのに、薬の服用量や通院回数を減らしている人もいる」と指摘。特例措置の再開の必要性を訴える。

■「受診我慢するしか」 被災者 重症化で悪循環の恐れ

 熊本地震から3年近くたち、仮設住宅での生活を余儀なくされる被災者の体調悪化が懸念されている。

 「出費を抑えるには、食費と医療費を我慢するしかない」。益城町の仮設住宅で暮らす女性(68)は、慢性的な膝と腰の痛みを抱えている。独り暮らしで、収入は年金だけ。持ち家が地震で全壊し、再建費用の工面に頭を悩ませる。

 地震前は趣味の家庭菜園を日々いそしんでいたが、今は仮設から一歩も外に出ず、誰とも会話を交わさない日も珍しくない。母の死と自宅をなくした喪失感で食欲がわかず、地震当時から体重が15キロ落ちた。「家を建てて仮設を出て行く人も増え、気持ちが焦る。今は不安だらけ」と訴える。

 地震発生から時間が経過してから心身の不調が表面化する人も少なくない。

 大津町の仮設住宅で暮らす自営業の緒方一男さん(63)は昨年2月ごろ、水道管の修理作業中に息苦しくなり、その場で動けなくなった。後日、病院で「地震によるストレス障害」と診断された。「地震直後から張り詰めていた気持ちが、家の解体が一段落してほっとしたので(症状が)一気に出たのかも」と語る。

 県内最大の仮設団地「テクノ仮設団地」(益城町)で、戸別訪問と健康相談会を無償で続ける東熊本病院の永田晃平副院長(41)は、「今は支援団体の目配りが利いているが、これから先も仮設に残らざるを得ない人たちは、さまざまな病のリスクの矢面に立ってしまう」と警鐘を鳴らす。

 仮設住宅を回り、被災者の健康状態や生活実態を調査している熊本学園大の高林秀明教授(地域福祉論)は「受診控えで重症化すれば、自治体の医療費負担も膨らみ悪循環になる」と指摘。「特例措置を打ち切って支援をゼロにするのではなく、生活困窮者など本当に免除が必要な被災者に対象を絞って、医療費自己負担の免除措置を再開するべきだ」と話している。

=2019/02/21付 西日本新聞朝刊=

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