【地域の針路】廃校活用で過疎地に光 教室→観光食堂、継続性には課題

西日本新聞

 平成の大合併は学校の閉校を数多く生んだ。解体費がかさみ“お荷物”になりかねない校舎を再活用する動きが各地で進む。一方で新たな課題も浮上している。

 来客用スリッパ、薄暗い木造廊下、「1・2年生」と書かれた教室の表札…。“校舎”に一歩入ると、厨房(ちゅうぼう)から「お帰りなさい!」の優しい声に迎えられる。長崎県・島原半島南部の山あいにひっそりとある塔(とう)ノ坂集落(南島原市)。50人にも満たない集落に飲食店「南島原食堂」はある。夏場ともなると1日約80人が雲仙観光がてら訪れる。

 食堂は2013年に閉校した長野小塔ノ坂分校の教室を再活用し、3年後に開店。児童たちが使っていた机や椅子をそのまま使い、給食を食べているかのような懐かしい雰囲気と地元のお母さん5人が作る郷土料理、そして「お帰り」の温かい接客で人気を集める。

 101年の歴史を重ねた分校は住民の絆を結ぶ集落の拠点だった。一時は約50人の児童が学んだが最後は4人に。それが今や知る人ぞ知る観光スポットとして活躍する。「俺もここで勉強したんだよ。たくさん人が来てくれてうれしい」。店が開く週末、よく顔を見せるという卒業生の長橋和義(70)は室内を見渡した。

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 06年に8町が合併した南島原市では児童数が08年度からの10年間で全体の25%(740人)減った。特に小学校は統廃合が進み、合併時の31校から17校に激減。今後さらに2校減る。文部科学省によると02~15年度に廃校になった小中高などは全国で6811校。うち九州は約千校に上る。廃校解体には数千万円もの費用が必要。放置しても多額の維持費が発生する「負の遺産」になりかねない。自治体が民間への売却や運営委託に躍起になる理由だ。

 昨年4月、宮崎市で廃校舎をビジネス活用している事業者や行政関係者らが集まり「九州廃校サミット」が開かれた。廃校舎は初期投資を抑えられる利点があり企業の関心は高い。全国では宿泊施設やオフィス、工場、水族館の例もある。「図工室は工場、給食室は飲食店。廃校にはいろんな機能がある」「地方創生や活性化の装置になる」。サミットでは実践に基づくさまざまな報告がされた。

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 全国では閉校後、87%の校舎が現存しており、うち7割の再活用が進む。しかし、活用先が決まっても道のりは平たんではない。

 「冬は客が少なくて母ちゃんたちに休んでもらってる」。南島原食堂を運営する「とんさか森の楽校(がっこう)」の代表、高橋和毅(42)が言う。「お金を稼ぐ仕組みを確立しないと続かない」

 市内では別の廃校を活用していたIT企業が冬の寒さや立地の不便さから5年で撤退、校舎は再び空に。「第2の廃校」である。

 ほかにも(1)建築基準で問題があると大規模改修が必要(2)宿泊施設に用途変更すると旅館業法や消防法の壁に直面する-など都市部にも共通する課題がある。

 少子化で増え続ける廃校舎を逆に地域の宝に-。「九州廃校サミット」は事業者間で連携し活用のノウハウや課題の共有を目指す。発起人の一人、福岡地域戦略推進協議会事務局長の石丸修平(39)は訴える。「住民の心のよりどころである学校を生かすことは、地方創生にもつながるはずだ」 =敬称略

=2019/02/22付 西日本新聞朝刊=

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