【日日是好日】托鉢姿に映る尼僧の覚悟 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 1月末、若い尼僧が行脚姿で羅漢寺に来ました。彼女は尼僧堂の後輩で、岩手県の臨済宗石雲禅寺様のお弟子さんです。縁あって曹洞宗の尼僧修行道場で修行しました。

 彼女は修行道場での修行を終えた後、お師匠様の指示を受け昨年の9月にキャンピングカーに改造したワゴン車で岩手を出発し、日本全国の主な街に止まっては一人で托鉢行脚をしております。

 実は昨年の11月に福岡の明光寺僧堂で、青山老師に彼女を紹介されました。私は彼女の姿勢に感動し、是非羅漢寺周辺で一緒に托鉢(たくはつ)しようと約束したのです。彼女は約束通り、はだしにわらじの行脚姿で現れました。早速私も行脚姿に着替えはだしになり、彼女の手製のわらじを借りて、二人の半日だけの托鉢に出発しました。

 最初は私が先頭になって歩きました。しかし托鉢が生活の一部になっている彼女の姿と比べると全く様になっていません。途中で情けなくなり、彼女の後について歩くことにしました。

 彼女は言います。「すれ違うだけの方にも、いつもの自分の姿を見ていただきたいので、ずっと姿勢を崩しません」。その言葉通り鉢を持つ左手、鈴を持つ右手の位置は変えず、読経をし続け歩きます。私も修行道場で月に1度の托鉢を経験していたものの、さすがに彼女の後姿には頭が下がりました。

 彼女は今30歳。三重県で学生だったときに東日本大震災があり、己の生き方を自問したそうです。尊敬する方に相談したところ、一枚の写真を見せられました。被災地で托鉢する僧侶の写真でした。これが出家を決意させます。

 大学を出て約2年間、教師をしましたが思いは変わりません。自分の命をもっと違う形で生かしたいと、縁あって臨済宗のお寺の門をたたきました。彼女のお師匠様のお寺は、「NPO法人パパラギの里」という支援施設を併設しており、托鉢でのお布施はすべて運営資金になります。

 「たとえ怒鳴られ水をかけられても、托鉢で頂いたものはすべてありがたく頂きなさい」。これは青山老師のお言葉です。お布施とは、金銭だけではなくさまざまな施しのことをいい、施される側の捉え方が重要なのです。

 彼女と半日、近隣を回り最後に羅漢寺の麓に戻ってきました。茶店の前で読経をすると、私たちの足を見て目に涙をためたなじみのおかみさんが「どうしたら、そんな穏やかな顔でいられるのかしら」と、彼女の印象を率直に言いました。托鉢する姿を見て感動する方がおられる。どうやら、彼女は施し施される托鉢の働きをきちんと活用できているようです。

 彼女と別れた次の日は吹雪で、今年初の積雪となりました。もちろん彼女は歩きました。1年間に頂くさまざまなお布施は、彼女の大きな力となり彼女の帰りを待つ岩手の仲間をしっかり支えることでしょう。あと半年、彼女の托鉢はまだ続きます。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/02/24付 西日本新聞朝刊=

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