「離島歌手」佐世保で芸能事務所 西内まりやさんら1000人巣立つ 高校時代のやじ教訓に

西日本新聞

ダンスのレッスンを見守る松瀬悦子さん=長崎県佐世保市 拡大

ダンスのレッスンを見守る松瀬悦子さん=長崎県佐世保市

故市川昭介さん(手前)から歌のレッスンを受ける10代の松瀬さん

 長崎県佐世保市に、女優西内まりやさん=福岡市出身=をはじめ、数々のスターを生んだ芸能事務所がある。昨年創立20周年を迎えた「スターライトスクール」。設立者で校長を務める松瀬悦子さん(61)は高校生の頃、九州の大小の島々を巡る「離島歌手」だった。夢を追い掛け、スクールに通う若者たちに伝えているのは、かつて離島で得たある教えだ。

 松瀬さんは福岡県大刀洗町出身。15歳の時、テレビ番組ののど自慢大会で優勝してスカウトされた。1975年の福岡大博覧会のイメージソング「あなたの福岡」で歌手デビュー。高校に通いながら、自衛隊の音楽隊とともに九州の離島へ赴いた。

 「歌のお姉さん役を務め、童謡、山口百恵に演歌…何でも歌った」

 島民向けのリサイタルの日々。鹿児島県甑(こしき)島には漁船で渡った。長崎県五島列島の嵯峨ノ島のような小島にも出掛け、宿泊施設がない島では民家に泊めてもらった。普通の高校生が過ごす夏休みはない。それでも楽しかった。

 「当時、島の人たちは生の歌を聞く機会が少なかった。感動してもらえることに喜びを得たのです」

 「アンコ椿(つばき)は恋の花」などのヒット曲で知られる著名な作曲家、故市川昭介氏に師事し、東京でレッスンを受け、売れっ子歌手を夢見たこともある。でも、離島歌手こそが天職だと、松瀬さんは思った。

 忘れられない出来事がある。島で歌っているときに「下手くそ」とやじられた。「心が入っていない」とも。きつい言葉が胸に刺さった。ちょうどその頃、ある島で、息子を海で亡くした女性から身の上話を聞く機会があった。

 「『板子一枚下は地獄』の漁師の方々は、常に危険と隣り合わせ。その機微や感情が分からなかった」

 歌に込める心のありようが、変わった。

 市川さんにもやじられた体験を打ち明けると、歌は「心」だと諭された。

 高校を卒業後、自衛官と結婚し、佐世保で暮らし始めた。カラオケ教室で歌を教えながら、スターライトスクールを設立した。歌だけでなく、ダンスやモデル部門もあり、人気ボーカル&ダンスユニット「AAA(トリプルエー)」の末吉秀太さん、2015年のミス・ユニバース日本代表宮本エリアナさんら千人以上の生徒が巣立った。

 現在は小中高校生を中心に、600人近い生徒が長崎県内6カ所でレッスンに励む。レコードやカセットテープからデジタル配信へと、音楽を取り巻く環境は時代とともに変わってきたが、生徒たちに教えることは一貫している。

 心を込めて歌いなさい。心を込めて踊りなさい-。

 「人間はアナログ。どんな時代も変わらない。だから、心が大事なのです」

=2019/02/27付 西日本新聞朝刊=

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