法曹の養成 「小手先改革」でいいのか

西日本新聞

 大学の法学部入学から法科大学院修了までの課程を5年で終える「法曹コース」を設け、現行よりも若い年齢で司法試験に挑戦できるようにする-。

 政府がこんな仕組みの導入に向け、今国会に関連法改正案を提出する準備を進めている。法曹(裁判官、検察官、弁護士)資格を得るまでの経済的・時間的負担を軽減する狙いという。

 しかし、実態としては志願者の激減で撤退が相次ぐ法科大学院の延命を図る“小手先改革”の印象が否めない。司法試験への近道を設けることには、法科大学院本来の趣旨を骨抜きにする施策であり、法曹の質の低下を招きかねない、として懸念する声も広がっている。

 政府案によると、法曹コースは法学部3年、法科大学院2年を基本にした一貫コースで、一定の単位を取得するなど要件を満たせば大学院在学中の司法試験の受験を認める。これにより現行では大学入学後、司法試験合格まで最短でも約7年を要する期間が約5年に短縮される。学生の負担軽減策として、司法試験の論文試験科目を憲法などの基本法に限定し、専門法を除外することも検討している。

 2004年度にスタートした法科大学院は、社会人らを含む幅広い人材を集め、法律家に求められる教養や倫理にも重点を置いた法学教育を行うことが使命とされた。司法改革の目玉として全国に74校が誕生したが、司法試験合格率の低迷で約半数が撤退し、九州で19年度以降も学生を受け入れるのは九州大と福岡大だけとなっている。

 背景には、法科大学院を修了しなくても司法試験の受験資格が得られる予備試験の存在がある。大学に入る資力がない人などを想定した制度だが、大学生や院生に「合格への近道」として注目されるようになり、大学院修了者よりも予備試験通過者の方が司法試験の合格率が高いという現象が続いている。

 政府案は、そこに歯止めをかける狙いがあるが、予備試験自体の見直しは盛り込まれていない。そのため法学者の間では「本末転倒」(須網隆夫・早稲田大大学院法務研究科教授)と疑問視する声が多い。

 大学や大学院が予備校と化して専門法の教育がおろそかになるとの懸念や、導入への議論が文部科学省の審議会など一部でしか行われていない、として再考を求める声も出ている。

 司法改革を巡っては、法曹人口増大に見合う法律業務の需要が生まれず、弁護士の供給過剰や都市偏在が進んだ経緯があり全体的検証も必要だ。政府は幅広く関係者から意見を聞き、望ましい法曹の在り方について、さらに議論を尽くすべきだ。

=2019/02/27付 西日本新聞朝刊=