佐賀市のバイオマス事業に熱視線 国内外から視察 高濃度のCO2を精製

西日本新聞

佐賀市清掃工場の排ガスを分離し、高濃度のCO2を回収する設備 拡大

佐賀市清掃工場の排ガスを分離し、高濃度のCO2を回収する設備

佐賀市からCO2の供給を受け、藻類を培養しているアルビータの施設 さびによる故障が発覚した循環ポンプ 藻類から抽出した成分を基に作っている化粧品

 地球温暖化の原因の一つとされる二酸化炭素(CO2)。この「厄介者」をどう削減するか、世界中で模索が続く中、CO2を活用した佐賀市のバイオマス事業が国内外で熱い視線を集めている。国連が唱える「持続可能な開発目標(SDGs)」や、環境や人権問題などに積極的に取り組む企業に投資する「ESG投資」といった考え方の広がりもあり、国内外の研究者たちの視察が増加。ただ、事業開始から2年を過ぎても販売額が当初の計画を下回るなど課題もある。

 同市高木瀬町にある市清掃工場。ごみ収集車が行き交う工場内の一画に、清掃工場の排ガスからCO2を分離・回収し、民間企業に売却するための設備がある。「清掃工場の排ガスを活用する国内唯一のプラントだ」。市バイオマス産業都市推進課の森清志課長は胸を張る。

 この設備では、工場の排ガスから塩分を取り除き、吸収塔(高さ43メートル)でアミン系吸収液を混合。CO2を低温で吸収し高温で放出するという吸収液の特性を生かし、再生塔(高さ25メートル)で加熱しCO2を取り出す。これによりCO2濃度は12%から99・5%になるという。

 高濃度のCO2は、清掃工場に隣接するバイオマス企業「アルビータ」に供給。同社はCO2を使って藻類「ヘマトコッカス」を培養し、抗酸化作用が高いとされるアスタキサンチンを抽出、サプリメントや化粧品を製造・販売している。昨年3月には佐賀大に「さが藻類産業研究開発センター」が立ち上がり、市内のクリークなどに生息する微細生物を分析、新たな活用策を研究している。

 全国農業協同組合連合会(JA全農)も高濃度のCO2をキュウリ栽培に生かす最新施設を今秋にも市清掃工場そばで稼働させる。

 「特にキュウリ栽培では重油をたいてCO2を作っている。市の自然に優しいCO2を再利用すれば、温室効果ガスの削減に少しでも貢献できる」と森課長。

 「嫌われ者」を価値あるものに変える試みに、国内外の関心は高い。

 市によると、2016年9月の稼働以来、2千人ほどが視察に訪れた。ビジネスチャンスを狙う国内企業の関係者のほか、中国やインドなど海外の研究者たちも17年度の45人から18年度は167人に急増。昨年12月にはポーランドで開かれた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)でも市の取り組みが紹介された。市新産業推進課の江島英文課長は「世界の潮流に乗った事業だ」力を込める。

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 豊かな将来性の一方で、足元の現実は厳しい。

 バイオマス事業は秀島敏行市長の看板政策で、設備に国の補助金を含めて約15億円を投じた。CO2を1日最大10トン製造し、1キロ36・4円で売却。供給先となる企業誘致の促進を前提に17年かけて投資分を回収する計画だった。

 ところが、稼働開始から19年1月までの販売額は計約213万円で、計画の約500万円を大きく下回る。

 供給先のアルビータがCO2を効率的に使う藻類の培養装置を導入したことで、1日の使用量が当初見込みの10分の1の0・1トンにとどまる。

 市の「誤算」は続き、昨年10月には、清掃工場から分離・回収設備に送る前段の循環ポンプで故障が起きた。代替品がなく、分離・回収設備が20日間止まり、市が市販のCO2を購入し供給する「おそまつな事態になった」(市議)。

 故障原因はポンプ内の軸がさびたこととされるが、さびた理由は不明。市によると、さびは想定外で補償の枠組みがなかった。このため市とメーカーのどちらが責任を追うか、両者の補償協議は難航しているという。市議会からは事業化を疑う声も上がる。

 バイオマスを活用した持続可能な社会づくりを進めるフィンランドの国立技術研究センターの幹部は今月上旬に市を訪れた際、市の取り組みを評価しつつも「ビジネスにどう結びつけるかが課題」と指摘した。

 秀島市長は19日の定例記者会見で、課題が多いことを認めた上で、「時間をかけた長い目での見方が必要だ」と述べた。

=2019/02/28付 西日本新聞朝刊=

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