タイ「反軍政」は第三極が受け皿に? タクシン派解党で

西日本新聞

 タイの総選挙が24日に迫る中、タクシン元首相派政党の一つ、タイ国家維持党が解党を命じられた。タクシン派への打撃は避けられないが、同じく反軍政を掲げる第三極の新党も支持を広げており、「反軍政勢力」全体としてどこまで勢いを保つか、なお流動的だ。

 7日夕、バンコクの憲法裁判所前。解党を命じる判決を受け、国家維持党のプリチャポン党首は涙ぐみながら「判決は悲しいが、私たちは王室を尊敬している」と詰め掛けた報道陣に冷静に語った。同党は事前に判決を受け入れる考えを示し、支持者にも「混乱を起こさないよう(判決を)家で聞いてほしい」と呼び掛けていた。警察は憲法裁周辺に約1500人を配置し、付近での集会を禁止。混乱を警戒したが、党側の呼び掛けのためか、支持者の姿はまばらだった。

 タクシン派政党の解党命令は過去も繰り返され、政権交代の引き金にもなった。だがタイ政治に詳しい専門家は「今回は王室に絡んだ問題のため抗議の声を上げにくく、解党は織り込み済みだった」と指摘。王女擁立という奇策も、タクシン派本体のタイ貢献党によるものではなく、解党リスクを見込んでいたとも考えられる。

 だが支持者にとっては選挙戦中に投票先を失うことになる。この日、憲法裁前を訪れたタクシン派支持者の元空軍職員ナニットさん(80)は「別のタクシン派政党に投票する」と語った。ただ、国家維持党の解党でタクシン派候補がいない小選挙区が350区のうち100区程度に上るとみられ、ダメージは大きい。

 そこで注目されるのが昨春結成された新未来党。40歳のタナトーン党首は反軍政を前面に打ち出し、「ライジング・スター(新星)」(現地英字紙)として若者を中心に支持を広げている。全小選挙区で候補者を擁立しており、タクシン派の空白区を埋める格好にもなる。

 ある識者は「反軍政ではタクシン派と一致する。地方で知名度が高まれば、かなりの票の受け皿になる」とみる。7日、憲法裁前にいた複数のタクシン派支持者も「新未来党とは仲間になれる」と話した。ただ貢献党も新未来党もさまざまな“疑惑”が取り沙汰され、解党の危険性をはらむ。

 親軍政派も神経質な動きを見せる。プラユット暫定首相を首相候補とする国民国家の力党は10日にプラユット氏の初遊説を予定していたが、中立性が揺らぐとの反発を考慮して中止。プラユット氏は6日、愛情を意味するしぐさを報道陣に見せながら「(遊説には)行かないよ。仕事をする」と語った。 (バンコク川合秀紀)

=2019/03/08付 西日本新聞朝刊=

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