平等なスタートライン 東京報道部 新西 ましほ

西日本新聞

 「特別な権利がほしいわけではなく、平等なスタートラインに立ちたいだけ」。バレンタインデーの2月14日、同性婚が認められないのは違憲として、13組の同性カップルが国に損害賠償を求めて一斉提訴した。

 性的少数者(LGBT)を巡る問題を取材して6年ほどになる。同性婚の合憲性を問う訴訟が日本では一度も起こされていないことを、ずっと不思議に思っていた。

 欧米では1970年代以降、同性婚を認めるよう求める裁判が次々と起こされた。長い闘いの結果、結婚と同等の権利を保障する登録パートナーシップ法の制定が、89年から各国で進んでいった。21世紀に入ると同性婚を法的に認める国や地域が出てきて、今その数は25を超えている。

 なぜ、日本の当事者は沈黙を続けていたのか。結婚の自由を求める人がいなかったわけではない。社会の認知度や理解が低く偏見が根強い中、声を上げられなかったのだ。

 在福岡米国領事館が2013年に開いたシンポを取材した際、LGBTという言葉を知る人は少なかった。話題に出しても「初めて聞いた」と言われることが多く、記事を書く際はLはレズビアン、Gはゲイ…と説明から始めた。カミングアウトしている人や支援団体も限られていた。

 15年に同性カップルに証明書を交付する制度が東京都渋谷区と世田谷区で始まると、九州でも福岡市が動き、現在検討中の市もある。従業員の同性パートナーに福利厚生制度を適用する企業も出ている。それでも偏見は根強い。

 今回の訴訟で原告の半数以上が匿名を選んだ。提訴後の記者会見で、家族や職場にゲイだと明かしていない男性は「本当はパートナーと並んで出たい。裁判で勝って、最後には顔を出して笑いたい」とメッセージを寄せた。埼玉県に住む古積健さん(45)と相場謙治さん(40)は名も顔も明かした。声を上げられない人を思い、「自分たちにしかできないこと」と考え、「役に立ちたい」と決意した。

 同性婚に反対する人もいるだろう。でも、頭ごなしに否定せずに、ぜひ原告たちの声に耳を傾けてほしい。見えていないだけで、当事者は必ず身近にいる。まずはその思いを知ることが、議論を始めるための第一歩だと思う。

 古積さんは「この裁判は、私たちと、ここにいないたくさんの仲間の尊厳を取り戻す長い旅。私たちの大切な相手を思う気持ちが、異性同士のそれと何一つ変わらないことを感じてほしい」と話した。

 彼らの言葉が、一人でも多くの人に伝わることを願う。

=2019/03/08付 西日本新聞朝刊=