外国人顧客増加に戸惑う地域金融 多言語に対応、資金洗浄対策 収益悪化「負担大きい」

西日本新聞

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法の4月施行を控え、金融機関が外国人に金融サービスを提供する体制整備を急いでいる。一方でマネーロンダリング(資金洗浄)対策の強化も金融機関の重要課題。外国人の口座を増やしながら不正取引をどう防ぐか、難しいかじ取りを迫られる。

 「外国人の増加にどう対応すればよいか」。全国銀行協会(全銀協、東京)にある資金洗浄専門の対策支援室に、地域金融機関からこんな問い合わせが相次ぐ。4月から外国人の口座開設や送金などが増加する可能性を見越してのことだ。

 昨年11月に開設した対策室の担当職員は3人。全国地方銀行協会なども非常勤職員を出している。「アクセルとブレーキを両方踏むようなもの」。中堅職員は、外国人への対応と資金洗浄対策を両立させる難しさをこう表現する。

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 金融庁は昨年8月、外国人に口座開設や送金などの金融サービスを日本人と同じように提供するよう求める文書を金融機関に示した。「外国人であることのみをもって、合理的な理由なく取引の謝絶などが行われてはならない」とする。

 外国人が多い地域を除けば、地域金融機関の対応は遅れている。福岡県内で支店長経験がある地銀幹部によると、外国人の多くは片言の日本語で来店。行員2人がかりで書類の作成や押印の習慣などを説明し、口座開設に2時間かかることもある。「外国人が増えると大変だ」と漏らす。

 一方で日本の金融機関は資金洗浄対策も遅れている。国際組織「金融活動作業部会」(FATF)は2014年の声明で、日本に対策を要請。経済制裁の対象国やテロリストへの資金をどう断つか、今秋に対策の進展が審査される。

 国家公安委員会によると、資金洗浄犯罪の摘発は暴力団や外国人、特殊詐欺グループが多い。金融庁幹部は「外国人を受け入れた上で管理するのが世界基準だ」と強調。スムーズな金融サービス提供と同時に、不審な取引の監視や調査、帰国時の口座売買阻止などの徹底を求める。

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 ただ、地域金融機関は超低金利で収益環境が悪化。多言語対応や資金洗浄対策に、従業員や資金を投入するのは簡単ではない。

 最大手のふくおかフィナンシャルグループ(福岡市)は資金洗浄対策として、口座や取引が悪用されるリスクなどを評価する最新システムの導入に設備投資する。口座開設時に外国人が働く企業の社員に同行を要請するなど、窓口対応の検討も進む。

 一方、九州の中堅地銀は窓口で使う多言語の案内文書が全銀協から配布されるのを待っている状態。資金洗浄対策もノウハウに乏しく、担当者は「職員も慣れていない。大手と違って負担が大きい」と戸惑う。

 九州は中国を経由して北朝鮮に資金が流れるなど不正のリスクが高いとされ、「海外送金後の行き先が追跡できない疑わしい取引がある」と明かす地銀関係者は少なくない。不正は地域金融機関の体制の弱さを突くケースも多く、課題は幾重にも横たわる。

=2019/03/09付 西日本新聞朝刊=

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