【福岡県政点検】(2)1次産業振興 「稼ぐ農業」実現模索

西日本新聞

 収穫の最盛期を控えたビニールハウスでは、イチゴの王様と呼ばれる「あまおう」が大きさ、色づきを競うにように、たわわに実っていた。「手を掛けただけ、結果が出る」。糸島市のあまおう農家、行弘司さん(57)は目を細める。

 国内外で人気を誇り、2017年度の県産イチゴの平均単価は1キロ当たり1443円と過去最高を更新。04年度以降、14年連続日本一で、県を代表するブランド農産物だ。

 父から受け継ぎ、イチゴ栽培歴30年以上の行弘さん。3年前に長男(28)が就農したことを受け、昨年、栽培面積を30アールから44アールへと拡大した。「あまおう導入前は、1キロ当たりの単価は千円前後。400円の差は大きい。あまおうだから踏み出せた」。妻、長男に加え、繁忙期は従業員2人を雇い、昨シーズンは約20・7トンを生産した。

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 あまおう人気の裏側で、県はある課題に直面した。「あまおうのイメージが突出し、他の県産食材の魅力が十分に伝わっていない」

 県は17年4月、福岡の食販売促進課を創設し、県産食材の売り込みを強化した。ターゲットは外食・中食事業者。サンプル提供や産地視察への招待を通じ、大都市圏のホテルや菓子店に、博多和牛や八女茶、イチジクの「とよみつひめ」などをPR。県産食材を使った「福岡フェア」の開催を呼び掛け、17年度は672店舗で実施にこぎ着けた。取扱高は前年度比約3割増の2億円を突破。JA関係者は「外食産業などと組むことで販促効果は出ている」と手応えを口にする。

 人口減や少子高齢化で国内需要の縮小が見込まれる中、海外への販路拡大も欠かせない。県農産物の輸出額は17年度25億500万円と、5年間で約2・2倍増。環太平洋連携協定(TPP)発効などで輸出に追い風となる期待もあるが、輸出先国や品目で検疫条件が異なるため、県は産地と連携して輸出用園地を設置するなど、生産体制の構築を模索中だ。

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 ただ、生産現場には将来を不安視する声は強い。農林水産省の統計では、県の農業就業人口は約5万7千人(15年)で、この20年で半数以下に減少。新規就農者は15年度341人、16年度358人、17年度380人と増加傾向だが、減少幅を埋めるにはほど遠い。

 県の農業産出額の1割を占める、あまおうの現場も例外ではない。農業全体に比べると減少幅は少ないが、17年度の生産農家数は1546戸、栽培面積は319ヘクタールで、それぞれ5年前より104戸、20ヘクタール減少している。

 小規模経営が大半で、高齢化と後継者不足が進む農業。いかに「稼ぐ農業」の実現を目指すか。県は農地集約による規模拡大や、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoT技術を活用した生産支援システム開発などに取り組み、省力化、効率化で生産性向上を図りたい考えだ。JA関係者は「農業に関する情報や技術も重要。農業振興に携わる人材確保をしっかりやってほしい」とソフト面の充実も要望する。

=2019/03/13付 西日本新聞朝刊=

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