目玉公約あっさり撤回 福岡市長ロープウエー構想 市議選争点化避ける

西日本新聞

ロープウエー構想の断念を表明する高島宗一郎福岡市長(左から2人目)=13日午後6時すぎ、福岡市役所 拡大

ロープウエー構想の断念を表明する高島宗一郎福岡市長(左から2人目)=13日午後6時すぎ、福岡市役所

 4カ月前の福岡市長選で掲げたロープウエー導入の目玉公約をあっさり取り下げた-。新年度当初予算案に計上した検討費を削除する修正案が可決された13日、高島宗一郎市長は「もうロープウエーは議論もしない」と表明。議会運営の安定化に向けて「親高島派」を増やしたい高島市長にとって、間近に迫った市議選でロープウエー構想の争点化を避けたいとの狙いだが、「夢」とまで語った公約より目の前の実利を優先する「高島流」に驚きと戸惑いが広がった。

 「あそこまで判断するとは思わなかった」。高島市長に近い市議の一人は修正案の「再議」(審議のやり直し)はないとみていたが、断念表明までは「想定していなかった」と明かす。市街地上空を走る国内で例のない「都市型ロープウエー」構想は、高島市長の看板施策。優位性に「絶対の自信を持っている」(市関係者)とされ、「判断材料を示せば理解を得られる」と信じていた。しかし、この日の市議会で検討費の削除案が可決。「市民と思いを共有できないのであれば、早く決断した方がいい」。高島市長は吹っ切れた表情で記者団に語った。

 実は、公約撤回に至った「裏テーマは市議選」(市長側近)だ。記者会見では、市長を一貫して支えてきた公明党市議団やみらい・無所属の会、自民党新福岡の各代表と一緒に並び、親密さを演出した。

 今回の市議選では、7選挙区(総定数62)に90人が出馬予定で各区とも混戦模様。新年度予算案への検討費計上でロープウエーが争点化し、自民市議の一部や野党は「ロープウエー反対」のチラシを配るなど攻勢を強めていた。「地域を回っても反対の声が多い」。高島市長にも、親しい市議から選挙での逆風を懸念する声が届いていた。

 高島市長と「生みの親」である最大会派の自民市議団は緊張関係が続く。4年前の市長選では一部市議が対立候補を支援し溝が深まり、福岡空港の出資問題などで対立を繰り返した。高島市長が「夢」より優先したいのが、自らに近い現職や新人の当選で、議会との関係安定を図ることだ。順調な市政運営を続けてきた高島市長にとって、当初予算案が修正されるという手痛い「黒星」だが、市長側近は「『負けて勝つ』。戦略的撤退だ」と解説した。

 市民世論がロープウエーに好意的でないとみるや、構想断念にまで踏み込み、沈静化を狙った高島市長。したたかな政治手法がのぞく半面、市民の間には「公約とはそれほど軽いのか」との疑問も生じる。

 自民市議や野党市議は今後、市長主導のロープウエー予算の削除に追い込んだ実績を強調する構えで、ある市議は息巻いた。「市長の暴走を止めた。市議選では二元代表制の議会の役割を果たしたと訴えるだけだ」

=2019/03/14付 西日本新聞朝刊=