【おおいた再考】(3)観光 「多文化」生かせるか

西日本新聞

 「この写真で欧米の人に伝わるか」「どのサイトに掲載するのがベストか」

 別府市が2年前に設立した「別府市産業連携・協働プラットフォームB-biz LINK」。市から出向する後藤寛和さん(37)は、訪日客向け観光サービスの開発やニーズ調査などを担当。人気を集める旅行商品や効果的な宣伝方法を探り、地元業者の「稼ぐ力」の底上げを図っている。

 9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)の公認キャンプ地になった同市では、宿泊施設の新設や改修がめじろ押し。ラグビーファンが多い欧米豪の訪日客取り込みのため、自動翻訳機やスマートフォン決済など「ビッグウエーブ」に向けた準備が着々と進む。

 後藤さんは、2000年開学の立命館アジア太平洋大(APU)1期生。別府市のキャンパスでは半数が留学生という環境の中で過ごした。世界の考え方に触れ「度肝を抜かれた」こともある。「別府観光に学生時代の経験を生かせれば」と模索する日々だ。

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 今や「日本経済の成長エンジン」といわれる観光産業。伸びの主因は訪日客だ。観光庁の統計によると、昨年国内で宿泊した外国人客は延べ8859万人(速報値)で過去最高。県も計134万人で、比較できる11年(36万人)と比べ約4倍になった。17年の伸び率は全国都道府県でトップだ。

 ただ課題もある。来訪地別でアジア圏が9割を占める。九州運輸局が昨年11月に欧米豪5カ国の訪日経験者を対象にした調査では、「温泉が豊富」として九州を支持したのは全国9ブロックで最低だった。県は「おんせん県」を掲げてPRに力を入れているが、アジア以外での知名度の低さや宣伝不足が露呈した。

 「富裕層は行った先でしかできない体験を求めている。それをどうアピールするか」。別府市で建設が進む、富裕層対象の「インターコンチネンタルホテル」運営会社のハンス・ハイリガーズCEOが同11月、地元観光業者を前に指摘したのは、訪日客の要求に応えられるサービスの提供。「B-biz LINK」の視点もここにある。

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 「20年に訪日外国人旅行者4千万人」。国はこの目標に向け、三大都市圏に集中する訪日客の地方分散を急ぐ。地方は「独自色」の打ち出しが不可欠だ。温泉以外に大分の特徴は何か-。

 答えの一つが「留学生」だ。県内では89国・地域、3504人の留学生(17年5月)が大学、短大などで学んでいる。10万人当たり人数は京都に次ぐ全国2位で、大半をAPU生が占める。ユニークな「多文化共生」を掲げ、アジアの人材育成拠点を目指して開学。これまで152国・地域から留学生を受け入れ、8千人以上が卒業。海外同窓会も26支部。今村正治副学長(60)は「他県にない大分の武器」と胸を張る。

 ただ現状には物足りなさも感じているという。「入学式や卒業式で海外からご両親たちが来る。彼らの考えを聞くにはもってこいの場なのだが…」。「大分シンパ」の世界的ネットワークと地元の国際化を押し進める留学生。成長を支える財産はすぐ目の前にある。「ポスト五輪」に向け、訪日客受け入れが加速するか、停滞するかは戦略の描き方次第だ。

=2019/03/16付 西日本新聞朝刊=

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