【おおいた再考】(6)防災 自助共助 地域で濃淡

西日本新聞

 閑静な住宅街の一角にそれはあった。佐伯市が昨年12月、同市池船町の児童公園に建設した「津波避難タワー」。遊具と並び立つ姿は圧迫感があり、「いや応なしに危機感がかき立てられる」と近くの主婦(38)は言う。市中心部は、南海トラフ巨大地震で最大7メートルの津波が想定されている。

 タワーは鉄筋コンクリート一部鉄骨造りで、2階と屋上に計360人収容できる。2階は海抜8・2メートル、屋上は11・2メートルあり、トイレや更衣室も備える。津波避難に特化したタワーは県内初。同市は総額10億円を投じ、2020年度末までにさらにタワー1基と高台を整備する。

 今後30年以内に70~80%の確率で起きると想定される南海トラフ巨大地震に向けた対策は喫緊の課題だ。大分市は同市三佐に約600人収容できる高台を整備中で、今月完成する。臼杵市も、市役所臼杵庁舎にタワー機能を備えた立体駐車場の建設を検討している。

 佐伯市防災危機管理課の武田哲寿さんは「沿岸部は特に早期避難が重要。死者ゼロを目指して整備を進めたい」と語る。

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 南海トラフ巨大地震の震源地に近い高知県は、東日本大震災を受けて各自治体に交付金を出して避難タワーの建設を促し、既に100基以上のタワーが造られた。比べて大分県は「ハード」対策の面で大幅に遅れているようにも映る。

 県防災対策企画課の担当者は「高知と比べて津波到達時間が遅いため、避難時間が確保できる。ハードに偏らずソフト面の対策と両輪で進める」と強調。防災メールの登録者数を増やすなどし、最大約2万人と予測する死者を600人程度まで減らしたい意向だ。

 ソフト対策の柱が、住民による「自主防災組織」。県によると、同組織の設立率は96・7%(17年度)と全国3位の高さ。ただ、避難訓練の実施率は58・8%(同年度)と伸び悩む。被災経験の有無で活動に濃淡があるという。

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 県内は12、17年と豪雨被害に遭い、16年には熊本地震も発生した。日田市中心部に近い清水町自治会(約580世帯、1700人)では、12年豪雨で河川の堤防が決壊。多くの家屋が浸水し、家屋1軒が流された。「犠牲者が出なかったのは偶然だった」と当時自治会長だった荏隈伸一さん(74)は振り返る。

 これを機に、同町自治会は組織の運営方法を見直した。自治会役員が兼ねていた防災組織の委員を専任とし、経験を蓄積できるよう任期を無期限とした。土砂災害の危険箇所や浸水の恐れがある場所などを記したチラシを隔月で各戸に配布し、避難訓練も年1回は実施。12年に0人だった防災士は14人に増えた。

 ただ、高齢化や人口減が進む地域では限界もある。17年豪雨で8割の家屋が被災した同市北部の山間地にある上宮町自治会(約30世帯80人)も自主防災組織はあり、自力避難が困難な高齢者それぞれに支援者も決めていたが、豪雨時に支援者が仕事に出るなどして機能しなかった。自治会長の藤井隆幸さん(70)は「昼間は人が少なくなる一方、1人で避難できないお年寄りは多い。避難のタイミングはいつも悩んでいる。同じ課題を抱える地域は多いはずだ」と語る。

 過疎高齢化が進む中、県民の防災意識を高め一人一人の命を守るためには-。先延ばしできない課題が突きつけられている。

=2019/03/19付 西日本新聞朝刊=

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