いじめ生まない環境づくり 教育大4校が支援プロジェクト

西日本新聞

いじめ防止研修会で実践授業の様子などを報告する福岡教育大付属福岡中の教員たち 拡大

いじめ防止研修会で実践授業の様子などを報告する福岡教育大付属福岡中の教員たち

 いじめによる自殺や不登校が後を絶たない中、教員を養成する福岡教育大など国立教育大4校が「いじめ防止支援プロジェクト」を立ち上げ、研修プログラムや授業研究などに乗り出している。いじめを生まない環境づくりとは―。その試みを取材した。

「傍観者」減へ教員ら研修

 3月上旬、福岡県宗像市の福教大であったいじめ防止研修会。大学関係者や教員らを前に、発表者の同大付属福岡中の久永美穂教諭(39)は「学校全体での取り組みの結果、いじめを許さない土壌ができつつあると感じる」と語った。

 福岡中は付属小からの内部進学も一定の割合を占めるが、生徒たちの出身校は多岐にわたる。そうした事情もあって、3年前、小中学校で系統立てた学習規律「話し方・聞き方の心得」を作成し、全ての教室に張り出して浸透を図った。

 小学校で身に付けておくべきスキルとして低学年は「話す人はみんなの方を向く」、高学年は「聞くときに要点をメモする」。中学校では「話し合いの方向を捉え、互いの考えを生かし合う」といった具合だ。「基本的なことだが、生徒に共通の確認事項があることで教室に落ち着きが生まれた」と久永教諭は話す。

 併せて、いじめアンケートの毎月実施や年2回の教育相談、全生徒との個人面談も進める。その結果、2016年度にゼロだったいじめ相談件数は18年度37件。潜在的な問題が掘り起こされたことで、これまでの対症療法的な対応から、予防に向けた足掛かりを得られるようになったという。

   ◇   ◇

 大津市の中2男子自殺問題をきっかけにいじめ防止対策推進法が13年に施行されて6年。だが日本生徒指導学会長で鳴門教育大の森田洋司特任教授は「憂慮すべき事態は続いている」と指摘する。

 全国の小中高校などでの認知件数は年々増加。17年度は過去最多の約41万4千件に上った。数の多さは「冷やかし」「からかい」といった、いじめの初期段階を積極的に認知する姿勢が広まったことが背景にある。一方で年間ゼロや数件といった学校もなお多く、現場の認識の違いが主要因とみられる地域差が浮き彫りになっている。

 教員個人の力量に委ねる従来のやり方には限界があるが、法律で学校に義務付けられている対策組織は「機能していないケースが目立つ」という。近年増えてきた会員制交流サイト(SNS)を利用したいじめなどは実態が見えにくく、学校内だけでなく保護者、地域、専門家など幅広い連携も必要になっている。

 森田さんは「起こったことへの対応にとどまらず日常的に情報を集約し、学校の実情に沿って未然防止に向けた支援、協働の在り方をきちんと模索すべきだ」と訴える。

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 福教大の研修会では、昨年4月に福岡中の1年生を対象に実施された道徳の授業も報告された。生徒たちは「いじめられる人(被害者)」「いじめる人(加害者)」「面白がって見ている人(観衆)」「見て見ぬふりをする人(傍観者)」という「いじめの4層構造」を疑似体験。加害者の後方にいた傍観者役が、無言のまま、被害者の後方に立ち位置を変えるといった役割演技をした後、感想を語り合った。

 被害者役は「最初は怖かったが(加害者の側にいた傍観者がいなくなり)安心するようになった」、加害者役は「自分たちがどんどん悪者に感じられるようになった」と言い、傍観者役は「(被害者の側に立つ傍観者の)数によっていじめる側の表情が変わった」と話した。

 「いじめをなくすのは傍観者次第ということに気付いてほしかった。手応えはあった」と担当した西村紀彦教諭(40)。会場からは、役割演技の効果やリスクについて質問があり、研究主任の姫島和久教諭(39)は「生徒のケアなど事前に教員間でしっかり議論し、当日も『しゃべらない』『ふざけない』といったルールを徹底させた。変化があるかどうかは今後、注意深く見守りたい」と語った。

 いじめ根絶への道は険しいが、一人一人の理解と行動で前に進むことはできる。福岡中の取り組みに、その一端を見た気がした。

いじめ防止支援プロジェクト 学校現場で深刻な課題となっているいじめの防止に向けて宮城教育大(仙台市)、上越教育大(新潟県上越市)、鳴門教育大(徳島県鳴門市)、福岡教育大の4大学で2015年に発足した。情報交換を進めながら、いじめ問題に対処できる教員養成のためのカリキュラム研究や教員の研修プログラム開発、新たな授業内容の構築のほか、各地で研修会やシンポジウムを開催。活動内容や配布資料はホームページで公開している。

=2019/03/17付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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