地価の回復傾向 自治体が知恵競う時代に

西日本新聞

 地方でも地価の回復傾向が鮮明になってきた。

 国土交通省が発表した2019年の公示地価は、住宅地の全国平均が前年比プラス0・6%、商業地はプラス2・8%となった。上昇は住宅地が2年連続、商業地は4年連続で、ともに上昇幅が拡大した。

 三大都市圏(東京、大阪、名古屋)を除く地方圏の住宅地がプラス0・2%と上昇に転じたのが今年の特徴だ。地方圏の住宅地の上昇はバブル期以来27年ぶり。昨年、上昇に転じた商業地も上昇幅を拡大した。地価の上昇が目立つ福岡、札幌、仙台、広島の地方中核4市が全体を引き上げている面があるとはいえ、緩やかな上昇傾向が地方にも広がってきたのは確かだ。

 九州7県では住宅地が福岡、佐賀、熊本、大分の4県で上昇し、長崎は下げ止まった。商業地は鹿児島、宮崎を除く5県で上昇した。鹿児島と宮崎でも住宅地、商業地の下落幅が縮小した。こうした改善の動きは各地域の活気の反映と言え、好ましい。ただ、人口減が進む中、バブル期のような一律底上げは考えにくい。定住促進や産業誘致、交流人口拡大など地域事情に応じ土地の需要を創出・拡大する知恵と工夫が求められる。

 好例が福岡市だろう。商業地の上昇幅は地方中核4市の中で最大だ。東京都区部や大阪市、名古屋市のそれをも上回る。住宅地も仙台に次ぐ上昇ぶりだ。

 建物の高さ制限緩和などによる大型再開発誘導や、訪日外国人客増加や創業支援施策などで店舗やホテル、オフィス需要が高まっている。ホテル建設が相次ぐ博多駅や天神の周辺で地価が急激に上昇し、周辺の商業地や住宅地に波及している。

 熊本市や長崎市でも、中心部や駅周辺の開発が地価を押し上げている。

 地道な取り組みが実を結んだとみられるケースもある。

 大分市への通勤圏でもある大分県日出町は、住宅地が18年ぶりに、商業地は1995年の調査地点設定以来初めて上昇した。JR暘谷(ようこく)駅周辺に図書館を備えた複合商業施設ができて利便性が高まったのに加え、出産前から乳幼児期、学童期まで多様なニーズに応える支援プログラムを用意するなど、子育てしやすい環境を整備し若い世代の受け入れにつなげている。

 経済誌の「住みよさランキング2018」で九州トップの福岡県福津市、2位の熊本県合志市でも、子育て世代の転入が続き、地価の上昇幅が拡大した。

 資生堂の工場進出が決まった福岡県久留米市では、住宅需要の拡大が見込まれる。それぞれの条件下で、自治体が取り組みを競う時代になっている。

=2019/03/20付 西日本新聞朝刊=

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