豪雨復旧、子育て、農漁業…「政策見極めたい」 有権者、期待と注文

 九州をけん引する役割を担う福岡県は、豪雨災害からの復興、農業と漁業の強化、宿泊税を含む観光産業の振興と、多岐にわたる政策課題を抱える。現新3氏による論戦の火ぶたが切られた知事選。県内の中心地である福岡都市圏の有権者も、候補者のメッセージに耳を研ぎ澄ませる。

 「家賃補助など1年じゃ話にならん。最低3、4年は(県などが)生活支援を」

 一昨年の九州豪雨で赤谷川が氾濫し、多くの住家が被災した朝倉市東林田区。区復興委員会の林隆信委員長(69)は、こう語気を強めた。復旧復興は途上。しかし、応急仮設住宅は2年の入居期限が今夏に迫っている。住民の不安はいまだ濃い。県に対し、「まずは今年、再び被害に遭わないよう河川の土砂撤去を徹底してほしい。さらに復旧後の河川も防災機能を果たせるよう、継続的な維持管理が重要だ」と訴える。

 県内で盛んな農業など1次産業の現場は「担い手、後継者不足」に頭を悩ます。

 糸島市で養豚業などを営む岩城賞弘(よしひろ)さん(69)は「勤務先を定年退職した後も元気な人は多い。若手だけでなく、シニアの新規就農も支援する制度を」と注文。具体策として、農地の貸し借りを市町村が仲介する「農地バンク」を挙げ、「インターネットで対象農地をスムーズに調べられる仕組みを作り、全県的に広げる必要がある」と提案した。

 昨年、県内を訪れた訪日外国人客は過去最高の327万人に達し、観光は今や県産業の“稼ぎ頭”となった感がある。

 それだけに、福岡市博多区で外国人客のマーケティング会社を経営する松清一平さん(48)の目には、空港や観光地の交通アクセス整備が物足りなく映る。「知事が音頭を取り、一体感ある観光政策を進めてほしい」。県と福岡市はそれぞれ、宿泊税の導入も検討中。「新たな財源は、お土産などの商品開発や多言語対応などの助成に確実に支出し、事業者が外国人客を取り込めるようにするべきだ」とくぎを刺した。

 全国的に少子高齢化が加速する中、子育てと福祉の対策充実は待ったなしの課題だ。

 5歳と1歳の子育てに追われる須恵町の公務員女性(34)は、まもなく3人目を出産予定。子どもを預けながら働くために欠かせない保育園に関して、「入園資格審査がさらに緩和されるとうれしい。県としても、保育士の待遇を改善して人材を集め、保育ニーズを満たすように工夫する余地はあるはず」と話す。

 福津市で地域医療に携わる医師・間厚子さん(83)のもう一つの顔は、高齢者約120人が集うサロンの代表。気軽に立ち寄り交流を楽しめる場は、高齢者の健康寿命の延伸にもつながるとして、支援の枠組みを県に望む。間さんは「豊富な人生経験を持つベテランの能力を、もっと地域で生かせる『現場』を新たにつくりだしてみては」とも。

 こうした県民の暮らしに直結するさまざまな政策論争はかすみがちで、代わりに県内や国の政局が前面に出てきている今回の知事選。

 福岡市早良区の会社経営、平山猛さん(49)は「自民党内の権力争いにはうんざりするし、若者の政治離れが進むのも無理はない」と指摘。「政治闘争に惑わされず、一つ一つの政策を見極めたい。福岡県は九州のリーダーシップを取り、東アジアの経済圏の拠点にもなり得る。候補者は、大胆で明確な戦略を打ち出してもらいたい」と、新時代の県政の針路を導く活発な論戦を期待した。

=2019/03/22付 西日本新聞朝刊=

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