課題残る 関係者と議論を 小島立氏

西日本新聞

九州大大学院法学研究院准教授小島立氏 拡大

九州大大学院法学研究院准教授小島立氏

◆著作権法改正案見送り

 政府は3月13日、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」についての結論が得られなかったことを受け、著作権法改正案の今国会への提出を見送ると決定した。

 筆者は法改正の実質的な議論を行う文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会の委員を務めていた。本年度前半、海賊版サイトへの閲覧防止措置(サイトブロッキング)の議論が不調に終わったことを受け、「ダウンロード違法化」の問題が小委員会に示されたのは昨年10月末。海賊版への緊急対策として始まったはずの議論は、違法な著作物であることを知って行うダウンロード(スクリーンショットを含む)を広範に違法化するとともに、その一部を刑事罰の対象とする方向に舵(かじ)が切られていった。小委員会で複数の委員が慎重な検討を求める共同意見書を提出するなどの異例の展開をたどった末、小委員会報告書はわずか3カ月で取りまとめられた。

 文化庁が与党に提示した案では、違法なソース(情報源)からのダウンロードについて、その事情を知っている場合には、どんなに些細(ささい)なものでも幅広く違法となること、そして、刑事罰において加重される「正規版が有償で提供されているもの」および「継続的にまたは反復して行う場合」という二つの要件が処罰範囲を適切に限定する効果を有しないことが危惧された。

 与党での法案審査が進む中で、文化庁案の広範な規制範囲は、私たちの日常的なコミュニケーションや知的生産活動に悪影響を及ぼすのではないかという懸念が社会で共有されていった。知的財産法・情報法研究者グループ、日本漫画家協会、日本建築学会会長、福岡の弁護士も発起人に名を連ねた弁護士グループなど多くの有志が慎重な検討を求める声明を発し、指摘する問題点も表現の自由や刑事手続きなどに広がった。

 政府が著作権法改正案の提出を見送ったことは「仕切り直し」にすぎず、この問題をどのようなフォーラムにおいて、法律専門家や表現者を含む利害関係者の声を適切に吸い上げながら議論すべきかという課題は残されたままだ。また「ダウンロード違法化」の法改正は、「1億総クリエイター」の時代の著作権制度を考える際に、いかにして多様な行為者を包摂すべきなのかという問題(社会的包摂)が喫緊の課題となっていることを図らずも明らかにした。

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 小島 立(こじま・りゅう)九州大大学院 法学研究院准教授 1976年生まれ、福岡県直方市出身。ハーバード・ロースクール法学修士課程修了。東京大助手を経て現職。専門は知的財産法、文化政策と法。

=2019/03/24付 西日本新聞朝刊=

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