印パ緊張 核保有国の衝突回避せよ

西日本新聞

 核兵器を保有する国同士による衝突が、拡大しようとしている。危険極まりない事態だ。

 インドとパキスタンの間で2月以来、軍事的緊張が続いている。空爆や戦闘機の空中戦が発生し、一時は大規模な軍事衝突も懸念される情勢となった。関係国が仲裁に乗り出しているが緊張緩和には至っていない。

 今回の対立のきっかけは、2月中旬にカシミール地方のインド支配地でインドの警察隊に対する自爆テロがあり、約40人が死亡したことだ。

 パキスタンを本拠とするテロ組織が犯行声明を出したため、インドがパキスタン領内のテロ組織施設を空爆した。これにパキスタンが反発してインド軍機を撃墜し、緊張が一気に高まった。その後も銃撃や砲撃が散発的に続いているという。

 背景にあるのは、カシミール地方を巡る領有権争いだ。両国とも同地方の領有権を主張して譲らず、これまでに3度本格的な戦争状態に陥っている。インドはヒンズー教、パキスタンはイスラム教が主流という宗教対立も根っこにある。

 特に憂慮されるのは、ともに核保有国であることだ。両国は核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、NPT体制の枠外で核兵器開発を続けてきた。非政府組織などの推算では、現在両国とも百数十発の核弾頭を保有しているとみられる。

 両国の核能力増強は、核拡散を防ぐ基本的枠組みであるNPT体制を形骸化させているが、北朝鮮やイランの核開発と比べ国際社会の危機感は薄かった。特に日本は2017年、インドとの間で核物質や原子力関連技術の移転を可能にする原子力協定を結んだ。インドの核保有を容認したに等しい対応だ。

 今回の危機は、こうした甘い対応の付けが回ってきた結果だと言える。

 このまま両国の衝突がエスカレートすれば、あれよあれよという間に核戦争に発展-という悪夢のようなことが起きかねない。国際社会は全力を挙げて両国の緊張激化に歯止めをかけなければならない。

 インド、パキスタン両政府ともに譲歩しづらい事情がある。インドは4~5月に実施される総選挙を前に、モディ首相が強硬姿勢を見せることで、反パキスタン感情の強い国民の支持を狙っているという。一方、パキスタンのカーン首相も軍部内の強硬論を無視できないようだ。

 しかし、国内向けの思惑で核保有国間の緊張が高まるという構図は危う過ぎる。両国政府には強く自制を求めたい。同時に、米国や中国など関係国が印パ両国に働きかけ、対話による早期解決を促すべきである。

=2019/03/25付 西日本新聞朝刊=