【日日是好日】「花いっぱい」計画進行中 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞

 少しずつ夜明けが早くなり寒さが和らいだ朝、一気に窓を開けると微かな春のにおいを風が運んできました。本堂前を掃除していると、頭の上からヤブツバキの花が落ちてきました。見上げるとヒヨドリがうれしそうに食事をしております。冬ざれの山々が一斉に活動し、次第ににぎやかになって来ました。

 京都出身の庭師のタケちゃんは、山の木々たちの世話をほぼ一人でしております。彼は「惑星僧伽(さんが)」というグループをつくられた庭師のお師匠様の下で修行をされました。僧伽とは和合衆という意味で、元々は仏教修行者の集まりのことをいいます。縁あって羅漢寺で働いてくださるようになり、僧伽の絆を感じます。

 タケちゃんは、私が帰山した当初からの仲間の一人で、私は彼にお願いをしておりました。それは「羅漢寺花いっぱい計画」を実行することでした。実は先代の父が唯一私の考えに賛同したことで、私の念願でもありました。

 タケちゃんは快く引き受けてくれて、早速旧参道にアジサイを植える計画を立て実行しました。当時、手入れされていなかった旧参道は、見違えるようにこけむす石畳の道に変わりました。さらに、大分芸短大の学生さんと中津市のご協力で、多くの苗を参道に植えました。

 しかし残念ながら、苗が小さかったことや、イノシシの被害に遭ったこと、日照りが続いたこともあり、せっかく植えた苗の8割は育ちませんでした。それでも彼はこの計画を諦めず、同じ外回り担当の相田君と一緒に、イノシシよけを考案し、生き残ったアジサイの為に、何往復も水を運んでくれました。挿し木で苗を大きく育てる畑も作りました。

 それから花いっぱい計画の実行は、昨年の晋山式に向けて庫裡(くり)の前庭の大改造計画につながりました。重い石や土を何度も山の上に運び、花の咲く木をたくさん植え、コケを山から採取し新しい庭に移植し、見事な庭を作ってくれました。その他、指月庵庭園のツツジの手入れや、冬には山中に植えた木々に寒肥を与えることなども怠りません。

 先日、モミジ約150本と大きなアジサイの株十数個の寄進を受けました。これらも全て、タケちゃんが山のどこに植えるか指揮し、他の仲間と植えてくれました。「10年後が楽しみです」と彼は言います。

 季節は形を成さず目には見えませんが、四季折々の植物たちが、様々な形で季節を教えてくれます。そして私たちに情緒を与えてくれます。どんなに時代が変わっても、10年先、20年先、100年先も同じ環境であってほしい。人間の感性がよみがえるこの環境を守りたい。タケちゃんをはじめ多くの仲間が同じ気持ちです。

 もう春です。僧伽と共に作り上げる花いっぱい計画、今年は既に見頃のようです。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

=2019/03/24付 西日本新聞朝刊=

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