【2019知事選ルポ】(3)島根 竹下王国崩壊の危機

西日本新聞

立候補者4人のポスターが並んだ島根県知事選の掲示場(右)。同県雲南市には、故竹下登元首相の顕彰像が立つ

 昭和最後の首相として、平成を幕開けした故竹下登氏が固い保守地盤を築いた島根県は「竹下王国」と称される。そのトップを選ぶ平成最後の知事選は、44年ぶりに自民党分裂選挙となった。

 現職の溝口善兵衛氏が引退を表明。自民県議の多くは、福岡県出身だが元島根県局長の丸山達也氏を推していたが、登氏の弟で党県連会長の竹下亘前総務会長ら5人の県連所属国会議員が松江市出身の大庭誠司氏を擁立、党本部の推薦を得た。国会議員主導の人選に反発し、自民県議22人のうち14人が丸山氏を支える。元安来市長で歯科医師の島田二郎氏も立候補し、分裂に拍車が掛かっている。

 告示の翌22日、丸山氏の選挙カーが中山間地の津和野町を巡った。「島根創生に全力で頑張ります」。先導したのは板垣敬司町議ら竹下系列の4人。板垣氏は系列県議と共に丸山氏支援に回った。「島根は長らく国会議員のトップダウンで動いてきた。そのやり方は終わりにすべきだ」

 島根県は竹下政権が誕生した翌1988年度から2010年度まで、1人当たりの公共投資額が23年連続で全国1位だった。しかし公共事業がしぼむにつれ、「王国」も徐々に揺らぐ。

 現在も県議18人が竹下派に連なるが、登氏の誕生月の2月にちなむ県議会内の派閥「きさらぎ会」は数年前に解散した。7期の洲浜繁達県議は「細田博之元官房長官(衆院島根1区)の系列県議も出てきた。もう派閥はなじまないということになった」と語る。

 告示の前、洲浜氏の携帯電話が鳴った。「何でこんなことするんだ」。登氏の秘書を長く務め、参院議員を引退後も王国に影響力を持つ青木幹雄元官房長官だった。だが丸山氏支援は揺らがない。洲浜氏は「昨年の総裁選では国会議員に頼まれて石破茂さんを支援した。県政は県議に任せてもらいたい」。県連の役職の辞職届も提出済み。「党の処分も覚悟の上だ」と腹を据える。

 告示の21日。「オール島根」を掲げる丸山氏の県庁前での第一声には、自民に加え、立憲民主、国民民主各党の県議も顔をそろえ、自民県議が「県民のための県政をつくる戦いに挑む」と訴えた。

 その集団の中から、約500メートル離れた松江市役所前に向かう人たちの姿があった。約20分後に始まった大庭氏の第一声。がんで入院中の亘氏の姿はなかったが、県連副会長の青木一彦参院議員が「オール自民党で支える」と宣言した。

 両氏とも訴えの柱は人口減少対策だ。「仕事の関係」で両氏の第一声に顔を出した自営業の男性(52)は「誰を選んでもしこりが残る。悩ましい」とこぼした。

=2019/03/26付 西日本新聞朝刊=