【2019知事選ルポ】(4)大阪 維新、存亡懸けた奇策

西日本新聞

 奇策に出た大阪維新の会の「総大将」の顔には不安がにじんでいた。維新代表の松井一郎氏。「権力が欲しいだけなら、これほど厳しい戦いはしない」。24日、大阪市長選告示日の最後の遊説で看板政策・大阪都構想やダブル選の意義をまくしたて、聴衆に問いかけた。「分かってもらえたかな? 今回の選挙の意味」

 任期を残し、大阪府知事の松井氏が市長選、市長だった吉村洋文氏が知事選に、立場を入れ替えて臨むダブル選。都構想の賛否を問う住民投票実現を「大義」に据え、ダブル選を同日投開票の府議選、市議選にぶつけて世間の耳目を引く戦略だ。地元民放は21日の知事選告示前から連日、討論会など特番を組む。維新の市議は「全国一の注目度。投票率は上がるはず」。空中戦が得意な維新の追い風になると踏む。

 だが、奇策は「ギャンブル」(幹部)でもある。「なんで、ダブルなんかするんや」。ある府議は支持者から問い詰められた。「都構想のため」と説明したが「納得してくれたか。正直分からん」。

 「一枚看板」だった橋下徹元市長が2015年に政界引退してから党勢低迷は否めない。本拠地・大阪でも17年の衆院選の比例票は、初の国政選だった12年に比べ3分の2に落ち込む。

 24日、松井、吉村両氏が並んだ繁華街・難波での第一声。聴衆は支持者ら中心で足を止める人は少なかった。古参の男性支持者(77)は「かつては身動きできん人だかり。橋下さんがおらんとなぁ」。

 ダブル選は反転攻勢のきっかけになるか。「党の存亡がかかってる。知事、市長。どっちか負けたら党も終わり」。維新幹部は覚悟を決める。「維新以外は全部敵。面白い戦(いくさ)やないか」

 反維新陣営には与野党の主要政党が集まる。24日、市長選に挑む柳本顕氏の出陣式。知事候補の小西禎一氏と柳本氏を自民党の甘利明選対委員長、公明党の北側一雄副代表らが囲んだ。過去のダブル選で自主投票だった公明は都構想の住民投票を巡る協議で維新と決裂し、立場を明確にした。

 自公陣営が神経をとがらせるのが「野合批判」。支援を受ける立憲民主、国民民主、共産各党は国政で激しく対立しているからだ。

 自公と合同選対を組む連合大阪は、立民府連代表の辻元清美氏との演説会を提案したが、自民は拒んだ。自民関係者は「反安倍政権の急先鋒(せんぽう)。表に出られたら格好のネタにされる」。

 ダブル選の行方を注視するのが首相官邸だ。憲法改正を目指す安倍晋三首相にとって、改憲に前向きな維新は連携対象だ。官邸は「静観」の構えだが、政府関係者は「仮に維新がどちらか落とせば、政権運営が狂いかねない」と気をもむ。

=2019/03/27付 西日本新聞朝刊=