【ヒットの秘密 ジブリの大博覧会】(中)時代性 いま作るべき映画を

西日本新聞

「もののけ姫」のポスター(c)1997StudioGhibli・ND 拡大

「もののけ姫」のポスター(c)1997StudioGhibli・ND

 スタジオジブリには映画制作の3原則がある。まず面白いこと。次に作るに値すること。最後が一定の収益を上げること。「作るに値する」とは、いま、この時代に作るべき映画かどうかということだ。代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんは「いつも時代のテーマは何かということを考えてきた」と自著で述べている。

 例えば「魔女の宅急便」(1989年公開)。男女雇用機会均等法が1986年に施行され、女性の社会進出が脚光を浴びていた時代。落ちこぼれの小さな魔女が都会で働いて自立を目指す物語は、多くの働く女性たちの共感を呼んだ。

 作品制作は1~2年の長丁場だ。その過程で起きた社会事象に影響を受けることもある。「もののけ姫」(97年公開)は、95年の阪神大震災と地下鉄サリン事件を色濃く反映している。

 当初の物語は、もののけ(怪物)が姫をさらう筋だったという。しかし、事件の1カ月後に宮崎駿監督が書いた企画書は違う。室町期の戦乱の中で、自然を象徴するもののけ姫が人間社会から来た青年に心を開く展開に変わっている。

 「憎悪と殺りくのさなかにあっても、生きるに値することはある」「21世紀の混沌(こんとん)の時代に向かってこの作品を作る意味はそこにある」。それは「人間を信じよう」という監督のメッセージだった。

 映画公開は難航した。関係者は「時代劇は古い」と反対。予告編で武士の首が飛ぶ場面には「残酷過ぎる」と反発があった。それでもジブリは強気を貫いた。キャッチコピーの「生きろ。」に、鈴木さんの思いが込められている。「誰かが『生きろ。』と言い切らなきゃいけない。それぐらい強い言葉が必要だ」

 思いは観客に届いた。「もののけ姫」は113億円の配給収入を上げ、邦画の興行記録を塗り替えた。

 ▼ジブリの大博覧会 福岡市早良区百道浜3丁目の市博物館で開催中(月曜休館)。西日本新聞社、FBS福岡放送の実行委員会主催。一般・大学生=1400円、中・高校生=1000円、4歳-小学生=600円。問い合わせはFBS福岡放送内=092(532)1111(平日午前9時半~午後5時)。

=2019/03/27付 西日本新聞朝刊=

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