【2019知事選ルポ】(5)大分 「県が頼り」現職1強

西日本新聞

大分県知事選は4期16年の現職広瀬勝貞氏(右上)に山下魁氏(左上)と首藤淑子氏(右下)の2新人が挑む構図になった

 「人口減少、超高齢化社会の困難な時代。かじ取りを誰に託すか問うのは全くの愚問だ。広瀬候補しかいない」。23日、5選を目指す現職広瀬勝貞氏の個人演説会会場で、元県職員の三河明史・国東市長が力を込めた。その1時間半後、隣の杵築市であった個人演説会では、同じく元県部長の永松悟市長がマイクを握り、行財政改革や産業振興など広瀬氏の実績を熱弁した。

 通商産業、経済産業両省の事務次官から知事に転じ、4期16年になる広瀬氏の選挙戦の「主軸」は元県職員。大分県内全18市町村のうち、両市を含め計7市町の首長が元県職員で、応援に駆け回る。7市の副市長も元県職員が務める。後援会事務局長も元県幹部だ。

 背景にあるのは、市町村の体力の弱さ。三河市長は「市の自主財源だけでは、何をやるのにも限界がある。国や県の補助金に頼らざるを得ない」と懐事情を明かす。同市の人口(2月1日現在)はこの10年で約6200人減って2万6884人にまで落ち込み、財政力は低下の一途。こうした市町村は県、国へのパイプ役として元県職員の首長や幹部を求め、県は「市町村と一体となったスムーズな施策実施」(幹部)のために人を送り出す。ある首長は「元部下だから、(広瀬氏を)当然支える」と言ってはばからない。

 こうした状況に加えて、野党は「人材がいない」(野党県幹部)。前回2015年の知事選では、旧民主党などが支援する元大分市長が広瀬氏に挑んだが「ダブルスコア」で敗れた。今回は自民、公明の県組織に加え、連合大分が広瀬氏を推薦。立憲民主、国民民主、社民は対立候補擁立を見送った。市町村ごとの後援会トップは軒並み地元商工団体トップが就いており、「1強」とも呼べる状態が生まれている。

 盤石の選挙態勢を敷く広瀬氏。唯一、神経をとがらせるのは投票率と得票率だ。「『今度の選挙は心配しなくていい』と言われるが、どれだけの支持が集まったかが大事」と自戒するように語る。

 野党では、唯一共産が新人の山下魁氏を擁立した。前回選挙に続き2回目の知事選挑戦。「広瀬県政は大企業優遇、大型工事推進で安倍政権の言いなりだ」と訴え、「広瀬氏への忖度(そんたく)があるのではないか。不健全だ」(陣営幹部)と県政界の現状についても警鐘を鳴らす。無所属新人の首藤淑子氏は、高齢者に優しい医療政策などを訴える。

 統一地方選で実施される11道府県知事選で、候補者30人のうち中央官僚出身者は11人。地方創生の旗が振られる中、地方政治の現場には「閉塞(へいそく)感」も漂っている。

 =おわり

=2019/03/28付 西日本新聞朝刊=