捜査、公判の検証を 松橋事件 海外には第三者組織も

西日本新聞

 【解説】松橋事件の再審判決で熊本地裁は、高齢の宮田浩喜さんの早期救済を最優先する姿勢を示す一方、殺人罪で有罪とした「誤判原因」には触れることなく無罪を言い渡した。確定判決はなぜ誤ったのか。どうすればもっと早く過ちを正せたのか-。冤罪(えんざい)を繰り返さないために徹底的に検証し、再発防止策を打ち出す必要がある。

 再審無罪となった事件を裁判所が調査し、公表した例はない。最高裁事務総局は「個別の裁判の当否の評価になりかねず、裁判官の独立を侵す恐れがあるため検証は困難」と説明する。検察も2010年に再審無罪となった「足利事件」など2件で検証報告書を公開しただけだ。

 海外では「裁判官の独立」よりも「冤罪防止」を優先し、検証のために国が動いている。フランス・ウトロ市で00年、集団児童虐待と騒がれた事件では13人が無罪となり、強引な捜査や取り調べが批判を浴びたことから国会の調査委員会が原因を検証。事情聴取の環境改善、勾留期間の制限など15件の司法制度改革につながった。韓国では17年、再審無罪事件を検証する組織が国の法務部内に設置され、殺人罪で男性が10年服役した冤罪事件を調査。再審請求で検察側が正当な理由なく抗告し、審理を長引かせていることを「抗告権の乱用だ」などとし、監査するよう勧告した。

 松橋事件でも地裁、高裁の再審開始決定に対しそれぞれ検察側が抗告。弁護側は「宮田さんの死を待つかのような不当な引き延ばしだ」として批判してきた。そもそも再審開始を導く決め手になったのは、弁護団が検察の保管証拠から発見した「被告が燃やしたと証言した」はずの布片だった。検察側が都合の悪い証拠を隠し、開示への制度的担保もない現状を放置していいのか。過去の反省に立つのなら、司法の検証は避けて通れない。

=2019/03/28付 西日本新聞夕刊=

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ