【ヒットの秘密 ジブリの大博覧会】(下)宣伝力 物語の本質を伝える

西日本新聞

 興行収入100億円を超えるヒットを連発するスタジオジブリ。基本は「作る=映画製作」「伝える=宣伝」「売る=配給」の3要素だが、中でも特出しているのが、その宣伝力だ。

 「人間は3回広告を見れば消費に走る」。代表取締役プロデューサーの鈴木敏夫さんの持論だ。304億円の収入記録を打ち立てた「千と千尋の神隠し」(2001年公開)の場合、目標動員の2800万人に3回ずつ広告を見せるというすさまじい物量作戦を立てた。

 予告編やポスター、テレビCM、大手コンビニとのタイアップ、全国試写会…。1年近いロングラン上映の期間中ずっと新聞広告を掲載し、NHKと連携してジブリのドキュメンタリーも放映した。宣伝費はそれまでの2倍。結果、ほぼ目的通りの2350万人を呼び込んだ。

 宣伝は量だけでなく、質も問われる。「千と千尋」は、千尋と美少年ハクの恋愛映画という見方もあるが、宣伝の主役はむしろ不気味なカオナシ。モノや生き物を際限なく飲み込んで暴走するカオナシは、まるで物欲の化身のようだ。そこに焦点を当てることで、作品の哲学的な深みが強調された。

 こうした宣伝戦略が練られるのは実は映画の完成前。広報部長の西岡純一さんは「ライカリールを何度も何度も見て、作品の本質を解き明かし、コピーを決めるんです」という。ライカリールとは、動画の元になる絵コンテをつないだ映像のことだ。

 「崖の上のポニョ」(08年公開)の最初のコピー案は「子どもの頃が一番良かった」。西岡さんは「救いがないし、本質でもない」と反対。議論の末、「生まれてきてよかった。」に変わった。「宣伝なしでは売れなかったかも」。ヒットの秘密はここにもある。

 ▼ジブリの大博覧会 福岡市早良区百道浜3丁目の市博物館で開催中(月曜休館)。西日本新聞社、FBS福岡放送の実行委員会主催。一般・大学生=1400円、中・高校生=1000円、4歳-小学生=600円。問い合わせはFBS福岡放送内=092(532)1111(平日午前9時半~午後5時)。

=2019/03/28付 西日本新聞朝刊=

PR

文化 アクセスランキング

PR

注目のテーマ