35年目の潔白に涙 吉報信じた宮田さん 松橋事件再審無罪

西日本新聞

 35年目に告げられた、潔白だった。松橋(まつばせ)事件で再審無罪判決が言い渡された28日、弁護団はこの日を待ちわびた宮田浩喜さん(85)が暮らす熊本市西区の高齢者施設を訪ね、吉報を伝えた。「無罪になりましたよ」。宮田さんの瞳に涙が光った。不自由な体での生活を長年支えたヘルパーは、その穏やかな表情に安堵(あんど)し、無実を訴え続けた長い年月を思いやった。

 「無罪が認められましたよ」。弁護団の斉藤誠共同代表(73)は、施設の自室で車いすに腰掛ける宮田さんに繰り返し伝えた。宮田さんは斉藤弁護士の手を強く握り返し、目元にしわを寄せて涙を浮かべた。

 次男賢浩(まさひろ)さん(60)は「おやじ、よう頑張った」と言葉を掛けた。斉藤弁護士は「明らかに(判決を)理解していた。宮田さんはこの瞬間をずっと待っていたと思う。やっと一つ終わった」と晴れやかに語った。

 13年前から宮田さんの生活を支えるヘルパーの園田則子さん(65)も、この日を共に喜んだ。訪問介護で初めて宮田さんの自宅に行ったとき、南側の窓にベニヤ板のようなものを張り外の光を完全に遮断していることを疑問に思った。カーテンを開けようと言っても、宮田さんは「開けん」と聞き入れなかった。

 宮田さんが事件について語ったことは一度もなく、再審請求審のことを知ったのは2016年に熊本地裁が再審開始を決定し、大きく報道されたときだった。「窓を閉ざしていたのは、事件のことがあったからなのかもしれない」。初めて過去に触れた気がした。

 介助を始めたころ、つえを突いて外出もできていた宮田さんは、脳梗塞で倒れて入退院を繰り返すごとに身体機能や認知能力が衰えていった。15年に施設に入所して間もなく、体調を崩して入院。食事が取れず衰弱し、「もう駄目なんじゃ…」と危ぶまれた。1カ月後、持ち直し退院した。

 「元気になったのは奇跡。弁護団や支援者たちが親身に支えてくれたことで、しっかりしなくちゃと生きる力が湧いたのでは」と園田さんは振り返る。

 「おめでとうございます」。弁護団の報告後、施設の職員たちは宮田さんに花束を贈った。宮田さんは2年ほど前から会話がほとんどできなくなった。園田さんは「本当は思いを言葉にしたかったはず」と心中を推し量る。「今日からが新しいスタートですよ。声を出す練習をしていきましょうね」。宮田さんは再び目を潤ませた。

=2019/03/29付 西日本新聞朝刊=

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