誤判検証踏み込まず 冤罪再発防止なお課題 松橋事件再審無罪

西日本新聞

 松橋(まつばせ)事件の再審無罪判決は、自白偏重の当時の捜査、有罪認定を揺るがす証拠が「隠されていた」問題など、誤判原因に踏み込むことはなかった。逮捕から34年。85歳になった宮田浩喜さんにとっては遅すぎる無罪の報。高すぎる再審の壁-。冤罪(えんざい)が明らかになるたびに叫ばれる教訓は生かされてきたのか。

 弁護士白書によると、再審無罪事件は日弁連の支援事件だけでも16件。裁判所が自ら検証し対策につなげた例はなく、検察の検証結果公表も2事件にとどまっている。

 2007年に真犯人が自白し、服役を終えた男性が再審無罪となった「氷見事件」で検察は「自白偏重捜査を改める」との報告書を公表した。その2年後、大阪地検は厚生労働省の文書偽造事件で局長だった村木厚子さんを逮捕、起訴。後に無罪となり、強引な取り調べは再び批判を浴びた。

 再審制度改革に取り組む元裁判官の木谷明弁護士は「日本の検察や裁判所には(誤らないという)無謬(むびゅう)神話がある」と指摘。再発防止策を公正・公平に検討するためには「第三者による誤判の調査機関が必須だ」と訴える。

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 諸外国では冤罪事件の検証システムが立ち上がっている。フランス・ウトロ市で00年、集団児童虐待と騒がれた事件では13人が無罪となり、強引な捜査指揮、ずさんな取り調べが問題になった。05年に国会に調査委員会が設置され、裁判官や検察官など約200人を聴取。取り調べの可視化、勾留期間の制限などの制度改革を実現させた。

 日本の再審制度を参考にしたとされる韓国では17年、国の法務部内に誤判を検証する第三者委員会を設置。昨年は再審無罪となった殺人事件を調査し「被告の再審請求に対する検察官の抗告は不当な引き延ばしだ」と勧告。法改正を含めた議論が進んでいるという。

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 国内では11年、DNA型再鑑定による再審無罪で注目された足利事件を契機に、誤判検証の第三者委員会を設置するよう日弁連が最高裁と法務省に意見書を提出。しかし「個別の裁判官の判断を裁判所外が評価するのは裁判官独立権の侵害だ」として一蹴された。

 与野党の国会議員に再審法整備を呼び掛けている九州再審弁護団連絡会メンバーの内田博文九州大名誉教授(刑事法)は「飛行機事故や医療事故でも事故調査委員会が立つのに、日本の司法は検証システムが根付いていない」と指摘。再審制度に詳しい大出良知九州大名誉教授(刑事訴訟法)も「人が人を裁く裁判で誤判の可能性はぬぐい切れないからこそ、過去の事例を検証し、司法を変えていくべきだ」と話している。

=2019/03/29付 西日本新聞朝刊=

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