外国人受け入れ、自治体目立つ準備不足 改正法4月1日施行 窓口1割間に合わず

西日本新聞

 外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管難民法が4月1日に施行される。人手不足に対応するため、新たな在留資格を設け、5年間で14業種に最大34万5千人を受け入れる見込み。政府は29日、新制度に関する関係閣僚会議を開き、準備状況を確認したが、受け入れる自治体や企業の対応は準備不足が目立ち、技能実習生や留学生の失踪も相次いでいる。

 安倍晋三首相は関係閣僚会議で制度の円滑な実施に向けて万全の準備を指示した上で「在留管理を徹底し、不法就労や不法滞在に対しては厳正に対処しなければならない」と述べた。

 新たな在留資格「特定技能」は一定の経験がある1号と、熟練した技能が求められる2号の2種類。2号は家族帯同が認められ、当面、建設と造船・舶用工業の2業種。1号は試験が免除される技能実習制度からの移行が多いが、宿泊、介護、外食の3業種は来月から試験を実施する。受け入れ先には、日本人と同等以上の報酬の支払いが義務付けられた。

 外国人との共生を目指す総合的対応策は126項目。災害情報をはじめ運転免許試験やハローワークの窓口など行政サービスの多言語化を進める。ただ目玉の一元的な相談窓口設置は対象の全国111自治体の約1割が間に合わない。

 日本語教育の充実にも取り組む。政府が各地の日本語教室設置を支援するほか、日本語学校の質を向上するため、出席率が低く、不法残留者が多い学校は留学生の受け入れを認めないようにする。

 外国人労働者が賃金の高い都市部に偏在するとの懸念は根強いが、政府は有効な対策を打ち出せていない。多額の仲介料を徴収する悪質なブローカー対策でも政府は送り出し国の9カ国と協定を結ぶことにしているが、実効性は疑問視されている。

 法務省の入国管理局は4月1日から「出入国在留管理庁」に格上げされ、外国人の管理と支援を担う。

    ◇      ◇

日本語学校適正化「早急に対処する」 菅氏が意欲

 菅義偉官房長官は29日の記者会見で、日本語学校の学費などを巡るトラブルが相次いでいることについて「(留学生を受け入れられる)告示基準を厳格化し、定期的な点検を実施する。法務省で早急に対処する」と述べ、日本語学校の適正化を急ぐ考えを示した。

 都内の「株式会社杉並外国語学院」は日本への留学を希望するベトナム人に1人当たり約100万円の「学納金」を送金させた後、連絡が取れなくなっている。被害者は70人近くに上るとの情報もある。この問題について菅氏は「個別の事案についての答えは差し控える」と述べるにとどめた。

 外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は同日、都内で記者会見し、日本語学校を巡るトラブルが頻発する背景について「政府の『留学生30万人計画』のもとで、ずさんな受け入れが続いてきたためだ」と指摘した。

    ◇      ◇

「共生社会」国の責任明記を

 改正入管難民法が「生煮え」との批判を受けながら成立して4カ月。政府は基本方針や分野別運用方針などで受け入れのルールの詳細を詰め、外国人と共生するための126項目の施策を策定した。ただ国の責任はどこにも明記されておらず、「地方任せ」の姿勢は変わっていない。

 かつてドイツは故国に戻る前提で外国人労働者を受け入れたが、景気が悪化しても帰国せず、逆に家族を呼び寄せて摩擦が生じた。このため「滞在法」を定めて外国人にドイツ語や歴史の学習を義務づけた。外国人排斥を訴えるデモも起きているが、政府は社会統合に取り組んでいる。

 韓国も全国200カ所以上に「多文化家族支援センター」を設置し、韓国語を学ぶ仕組みが整っている。両国とも法律を定め、国費を投入して国の責任で取り組んでいる。

 一方、日本では自治体間で外国人への支援の格差が広がっている。多言語対応の相談の窓口がない自治体もある。日本語を学ぶ場すらない地域もあり、指導はボランティア頼みだ。

 「外国人は働いて稼いだら帰る」。ある政府高官の言葉が耳に残っている。外国人は人手不足を埋める「労働力」でしかない、という本音が見え隠れする。

 日本はこれまでも多くの外国人労働者を受け入れてきたが、政府は支援を自治体や民間に丸投げしてきた。その結果、日本語が話せない外国人が増え、不就学の子どもたちは放置されている。共生とは程遠いのが現状だ。共生社会の実現には国の責任を明記した法律が必要ではないか。同じ過ちを繰り返してはならない。

=2019/03/30付 西日本新聞朝刊=