「それを言っちゃあ、おしまいよ」…

西日本新聞

 「それを言っちゃあ、おしまいよ」。フーテンの寅さんなら、こう諭すだろう。夫婦げんかでの禁句の話ではない。国と国の付き合いの問題だ

▼厚生労働省の課長と東京の年金事務所長が相次いで更迭された。前者は韓国の空港でトラブルを起こし、職員に殴り掛かった上「韓国は嫌いだ」などと暴言を吐いた疑いがあるという

▼後者は韓国人について「ひきょうな民族」「新規入国拒否」などとツイッターで発言。匿名での投稿だったが、身分が知れて非を認めたそうだ

▼政治的な関係で見れば今の韓国は厄介な国だ。向こうからも偏見交じりの対日批判が聞こえてくる。けれども同じ土俵に乗ってしまえば、それこそおしまい。敵対感情が募るだけだ。視野狭窄(きょうさく)に陥ると全体像を見失う

▼この競技も大局観がものをいう。今、話題の囲碁界。10歳の仲邑菫(なかむらすみれ)さんが史上最年少でプロの免状を手にした。プロ九段の父親らから指導を受けつつ、囲碁強国の韓国に修業に通い力を付けた。卓球の福原愛さんが中国で腕を磨き、日中双方で愛された姿と重なる

▼この親子の物語もおしまいにしたくない。18年前、韓国人留学生が東京のJR駅で命を落とした。線路に落ちた日本人を救おうとした李秀賢(イスヒョン)さん。彼の父李盛大(イソンデ)さんが先日亡くなった。日韓をつなぐ仕事に就く希望を抱いていた息子の志を継ぎ、日本で学ぶ留学生の支援事業を続けていた。ご冥福を祈りたい。

=2019/03/30付 西日本新聞朝刊=

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