数学者で作家の藤原正彦さんは英国の大学で研究生活をしていたころ初対面の人に聞かれた…

西日本新聞

 数学者で作家の藤原正彦さんは英国の大学で研究生活をしていたころ初対面の人に聞かれた。「夏目漱石の『こころ』の中の先生の自殺と、三島由紀夫の自殺とは何か関係があるのか」

▼そういう例はまれだろうが、日本人としての教養を身につけていないとまずい場面が、海外ではビジネス面でも珍しくない。英語がペラペラでも内容が薄い人は国際人とはいえない、と藤原さん

▼平成のベストセラー本の一つになった「国家の品格」(新潮新書、2005年)の中でいろいろ書いている。全国の小学校の9割以上で英語を教えるようになったことにも触れている

▼話は飛ぶが、日本の国の外形は昭和から平成にかけてマネー至上主義で崩れ、他者への思いやりが薄れるなど古来の心の形もおかしくなった

▼国の姿形でいえば、劇作家の野田秀樹さんが本紙夕刊コラム「ゴーマンイング・マイウェイ!」で国会の言葉の風景を斬っていた。失言を重ねて人を傷つけたりする閣僚たち。「知性が欠如」した言葉の数々。「どういう所で言葉を学ぶと、ああいう言葉が湧いて出るのか」と

▼自国語の風景をつくり直したほうがいいのかもしれない。藤原さんは「英語はたどたどしくていい。内容が全て。それにはまず国語」と言う。そして歴史や文化も身につけさせるのが「遠回りでも国際人育成の最も良い方法」とも。次の時代にも持っていきたい考え方の一つだ。

=2019/03/31付 西日本新聞朝刊=

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