がん治療の前に 妊娠能力を守る 受精卵や卵子を凍結 「若い世代の選択肢に」 九大病院が院内連携 1年で7例

 がんの治療を受ける若い患者に、妊娠する能力「妊よう性」の温存を提案する試みが広がっている。九州大病院(福岡市東区)では昨年4月から、産科婦人科を中心に診療科の枠を超えて連携し、1年で7人の卵子や受精卵の凍結が実現した。2019年度中には県内の関係医療機関にも連携を広げる予定。九大病院産科婦人科の加藤聖子教授は「抗がん剤や放射線が妊よう性に影響することを知らない人も多い。がん治療の一部として定着させたい」としている。

 国立がん研究センターの推計では、日本で1年間にがんと診断される40歳未満は約2万3500人。医療技術の進歩で経過が良くなり、治療後に妊娠、出産を望む人も増えている。ところが、化学療法(抗がん剤)や放射線治療は生殖機能に影響が及ぶことがある。抗がん剤の種類や放射線を照射する場所などによるが、卵巣や精巣などの機能が低下したり、失われたりしてしまう。

 九大病院では、小児科や血液内科、乳腺外科、整形外科などと産科婦人科が連携。がんを治療する主治医の判断で、40歳未満で治療開始までに余裕がある女性患者には、病状や治療法などを説明した後、妊よう性への影響と温存方法についても説明。希望があれば、産科婦人科につなぐ。

 妊よう性温存法には、卵子や受精卵(胚)、卵巣の凍結などがある。卵巣凍結は研究段階のため、九大病院では卵子と受精卵の凍結を行う。江頭活子助教によると、がんの治療を始める前に、約2週間にわたって排卵誘発剤を注射し、全身麻酔で採卵する。採取した卵子は液体窒素で凍結保存する。費用は医療機関によって異なるが、九大病院は約35万円。1年ごとに保存を続けるかを選び、続ける場合は更新料1万円が必要になる。

 これまでに乳がんの30代、骨肉腫の10代など7人が凍結。大半が未婚で、「子どもを持つことが夢で、産めなくなるならがんの治療を受けない」と訴えた人、「妊娠できるという希望を持って治療に臨める」と喜ぶ人もいたという。

 ただ凍結受精卵の子宮への着床率は、年齢によって異なるが、30%程度とされる。凍結卵子からの着床率はさらに低いとされ、妊娠が100%保証されるわけではない。また、がんの治療が2週間程度遅れるというデメリットもある。

 費用は全額自己負担となる。このため、滋賀県が16年度から、未婚者も対象に助成金(上限は女性10万円、男性2万円)を出す制度をスタート。京都府や広島、埼玉、岐阜各県なども費用を助成している。男性の生殖機能温存については、原三信病院(福岡市博多区)などが精子凍結を実施している。

 九大病院を中心とする医療機関の地域ネットワークができれば、患者はがん治療と生殖機能温存の両立がしやすくなるという。加藤教授は「がんになると考える余裕がなくなってしまう。若い世代には選択肢として頭に入れておいてほしい」と呼び掛けている。

=2019/03/25付 西日本新聞朝刊=

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