フォーク編<416>永井龍雲(19)

西日本新聞

「音域が広がった」と語る永井龍雲 拡大

「音域が広がった」と語る永井龍雲

 永井龍雲はデビュー40周年記念アルバムとして一昨年に「スライド・ショウ」を発売した。表題作の「スライド・ショウ」はこのアルバムの最後に収録されている。

 〈…こんな穏やかな 心の中で 今終わりに向かって 思うのは 人生はまるで スライド・ショウ 苦しんだだけの甲斐はある 生きて行くだけの価値はある〉

 「還暦の友よ」という作品も収められているように、還暦を意識したアルバムだ。60年を振り返ればまさに「人生はスライド・ショウ」である。当然、収録10曲には過ぎ去った時代への感傷、後悔、哀愁といった風景も映し出される。それも歌に不可欠な抒情(じょじょう)だ。

 龍雲は、アルバムについて「私小説」と語っている。その私小説が「生きて行くだけの価値はある」の一行で閉じられている。この一行はこのアルバム限定ではなく、60年間の決算としての言葉と思える。人生を肯定する救済の歌。それが龍雲の強いメッセージだ。

 「老若男女を問わず、辛い人生を生きる多くの人々の心に、灯(あか)りを灯(とも)すような歌を作って、届けたい。それもスキルアップさせて、さらに活動の幅を広げられたらと思っています」

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 61歳の永井龍雲は、沖縄にいるときはジョギングを日課にしている。那覇マラソン、東京マラソンなどにこれまで13回、出場している。

 「以前は鼻炎もひどく、風邪をひきやすい体質だったが、マラソンのおかげか、緩和されているように感じます」

 走ることを体調管理の一つにしている。その健康法はいうまでもなく、声の管理にもなる。歌手にとっての生命線はその声にあるからだ。年齢を超えて変わらない声を保持していくにはストイックな私生活も欠かせない。ジョギングの効用について次のように語る。

 「体重増もコントロールでき、肺活量も増すことから発声が楽になり、音域は歳をとってむしろ広がりました」

 常にこうしたベストな状態を志向する理由は明確だ。

 「歌を作ること歌を唄(うた)うことが他の何よりも好きだという気持ちと、自分の音楽を支持してくれるファンの期待に応えたい一心です」

 龍雲の「スライド・ショウ」はまだまだ続いていく。

 (田代俊一郎)

=2019/04/01付 西日本新聞夕刊=