学校内にスマホ、僕らも議論 小中学校で禁止見直し 国が検討

西日本新聞

学校へのスマートフォン持ち込みについて議論する小学生たち 拡大

学校へのスマートフォン持ち込みについて議論する小学生たち

スマートフォンの問題点について語る清川輝基さん

 小中学校への携帯電話やスマートフォンの持ち込みはOKか-。持ち込みを認めた大阪府教育庁の動きを受けて文部科学省は2月、これまでの禁止方針を見直す検討に着手。北九州市でも有識者による議論が始まった。一方で、子どもたちはどう思っているのだろう。企業研修などを行う福岡市南区のベンチャー企業「ビッグトゥリー」が運営するディスカッション塾「Dコート」に通う子どもたちが、自らの考えを述べながら意見を交わした。

 まずは小学生の声から。福岡市の小学4年、瑛蓮さん、夏蓮さんの双子姉妹に聞くと、夏蓮さんは必要、瑛蓮さんは不必要と賛否が割れた。

 2人の学校では校内での使用は禁止されているが、通話やメールなど機能が限定された子ども用の携帯電話を持っている人は多いという。タブレット端末が配備されており、授業の調べ学習などに活用している。

 「昼休みはあまり外で遊ばないし、遊び道具も少ない。スマホがあれば便利だと思う」(夏蓮さん)

 「でも1年生はなくしたりしないかなあ。使う時間も限定しないと、頭が悪くなりそう」(瑛蓮さん)

 自分で管理ができない子どもにはどう対処するか。

 「誓約書を作ってルールを破ったら没収するとか、管理のルールをきちんと確認しておけばいいのでは」(夏蓮さん)

 「学校ではユーチューブやティックトックには載せてはいけないと教わっている。使えるようにしたとしても、きちんとルールは守らないといけないと思う」(瑛蓮さん)

   ◇   ◇

 続いては高校3年の青陽さん、高校2年の紘希さん、中学1年の綾菜さん=いずれも福岡県内=が話し合った。高校生2人はスマホを所有。青陽さんの学校は持ち込みができ、紘希さんは校内で電源を切り、かばんにしまうことになっている。綾菜さんは子ども用携帯電話を持っているが持ち込みはできないという。

 3人は、持ち込み可ならどの年代からが良いかを議論。紘希さん、綾菜さんは高校1年から、青陽さんは小学4年からという意見だった。

 「小中学生では情報モラルが身に付いていない。中学までにこういう書き込みはだめと学んだ上で、高校から持ち込めるようにすればいい」(紘希さん)

 「小学生から持たせてきちんと使い方の指導をした方がいい。(小学校で必修化される)プログラミング教育もあるし、早いうちから勉強した方がいいと思う」(青陽さん)

 「学校に持ち込む必要性を感じない。スマホの画面ばかり見ていると、体が悪くなりそうだし、普段のコミュニケーションもできなくなりそう」(綾菜さん)

 中学生の綾菜さんの周囲でも、自宅でスマホを使う生徒は多い。スマホの普及で、綾菜さんは日常会話にも変化が生じてきていると感じる。

 「スマホを持っている人はスマホで知った情報ばかりを話題にしている。ゲームやネットの動画の情報を知らない人はついていけない。情報格差が広がっているのではないか」

 スマホを巡っては近年、会員制交流サイト(SNS)によるいじめや、児童生徒による不適切な動画の投稿といった問題も相次ぐ。3人の学校では外部の講師を招くなどしてネット上のマナー指導を行っている。ただ青陽さんは「どんなに校内で禁止しても使う人はいる。具体的にどう危険なのか、事前に認識させるのはかなり難しい問題だ」と指摘。その上で「生徒を信用してスマホを使わせてみて問題があれば、その都度改善していけばいい」と主張した。

   ◇   ◇

 議論を見守ったビッグトゥリーの高柳希社長(35)は「スマホは今や生活に欠かせないツールで大人になれば持つようになる。せめて小中学生の間は手にせず、直接話すことの楽しさを知ってもらった方が良い」。できるだけ早い時期にデジタル機器に触れるべきだと考えるスタッフで福岡大1年の児玉和也さん(19)は「児童や生徒が自分たちで使い方のルールを決めた方が守られるし、主体性を育てることにもなる」と語った。

解禁の課題多く、慎重に NPO法人「子どもとメディア」代表理事の清川輝基さん

 文部科学省は、これまでスマートフォンなどの小中学校への持ち込みを禁止する通知を出しているが、持ち込みに対する課題については何ら言及していない。方針の見直しには子どもも保護者も学校も、メリットを含め納得できる合理的な理由と対応が不可欠だ。

 例えば登下校の災害発生時などの緊急連絡手段に必要と判断し、持ち込みを認めたとする。一部の保護者は安心を得られるだろうが学校での管理態勢が課題になる。学校側がスマホなどを預かる場合、大量の機器を保管する設備やスペースを検討して指示しなければ現場任せでは難しい。

 一方、個人管理であれば今度は利用に関するルールの厳格化が求められる。全員が持っていなければ授業などでの活用は難しく、校内での使用はまず認められないだろう。むしろ懸念されるのは、授業中に災害が起きて児童生徒のスマホが一斉に鳴り響く事態だ。学校側の統制は難しくなり逆に大混乱する恐れもある。

 私たちは、子どもの心身に影響のあるスマホに触れるのは大人になってからでも遅くないと訴えている。厚生労働省研究班の調査結果で、中高生の7人に1人は病的なインターネット依存も疑われている。学校に持ち込んでもいいという「お墨付き」を与えればさらなる深刻化は想像に難くない。日本でのそういった教育はなお不十分だ。

 大阪府教育庁は子どもに持たせるかどうかは保護者の判断としている。しかしそのことが結果的にスマホを持たない、あるいは持てないことを意識していなかった子に格差という無用な感情を抱かせはしないか。

 多岐にわたる問題を解決しないまま小中学校への持ち込み解禁だけが先行するのは無責任で、なぜ今、学校にスマホが必要なのか、感情論ではない慎重な議論が必要だ。(談)

「持ち込み容認」大阪府が先行

 文部科学省は2009年、小中学校への携帯電話の持ち込みを原則禁止するよう通知。「学校における教育活動に直接必要のない物」と定義してきた。一方で携帯電話やスマートフォンの普及は年々進み、内閣府の調査で2017年度の所有・利用率は、小学生55.5%、中学生66.7%、高校生97.1%に上る。

 大阪府教育庁は、昨年の大阪北部地震に伴い、子どもの安全確認のために柔軟な対応を求める保護者からの要望を受けて19年度からの持ち込み容認を決定。市町村教育委員会がルール作りに活用するガイドラインを策定し(1)使用は登下校時の防災・防犯のために限る(2)家庭で使う時間の目安(平日30分、休日60分)を定める(3)会員制交流サイト(SNS)やメールに人の悪口やうわさなどいじめにつながることは書き込まない-などを示した。この動きを受けて文科省も通知を見直す方向で検討を始めている。

 学習塾「明光義塾」が3月上旬、小学生高学年(4~6年)と中学生の保護者760人を対象に実施した調査では、持ち込み反対が54.2%に上り、賛成(34.7%)を上回った。

=2019/03/31付 西日本新聞朝刊(教育面)=