新しい教科書 ゆとり持って深い学びを

西日本新聞

 楽しみだが、不安もある。教員の本音ではないだろうか。

 文部科学省が、新たな学習指導要領に沿って2020年度から使用される小学校教科書の検定結果を発表した。

 この20年ほどの間に、小学校の学びには2度の大きな曲折があった。知識の増大を重視する「詰め込み教育」に対する批判が高まり、「ゆとり教育」が進んだ。その後、学力低下に対する不安が広がり、再び知識の量を増やす「脱ゆとり教育」にかじを切った。

 新指導要領は、その流れを踏襲しつつ、「学びの質」を大きく変える。最大の特徴は、思考力や表現力、判断力をかん養するため、アクティブラーニング(AL)とも呼ばれる「主体的・対話的で深い学び」を実現することにある。

 今回の検定に合格した教科書も新指導要領に沿った内容となっている。例えば、平安時代の文化をキャッチコピーで表現する。鎌倉時代の武将の功績を4こま漫画にまとめる。楽しみながら、子どもを思考や表現に導くユニークな工夫と言えよう。

 第2次ベビーブーム世代の入学に備え大量採用された教員が退職期を迎え、経験の浅い教員が増えている。指導法を懇切に説明した教科書が目立ち、ALへの対応も相まって、全教科の平均ページ数の合計は現行教科書の1割増となった。

 若手教員の助けにはなろう。だが、授業が型にはまってしまえば活力を失い、子どもから主体性や考える力を引き出すことは難しくなる。教員自身が創意工夫を重ね、授業をつくる力を養うことが肝要だ。

 とはいえ、その余裕が、今の教育現場にあるのか。

 日本の教員の過重労働は、国際比較でも突出している。過労死レベルの長時間労働を強いられている教員は少なくない。

 今後、ALを導入した授業づくりに加え、英語学習の拡充やプログラミング教育の導入によって、教員の負担がさらに増大することは間違いあるまい。

 中教審が1月に示した教員の働き方改革に関する答申には、教員が担っている広範な業務を、学校の事務職員や地域ボランティアなどに「仕分け」する方針が盛り込まれた。小学校の教科担任制の充実や、標準的な授業時間などを含む教育課程の在り方の見直しも検討課題として挙がっている。

 文科省は実効性のある働き方改革を急ぐべきだ。教育委員会や学校も、保護者や地域住民の理解を得ながら、教員の負担軽減に取り組んでほしい。

 「深い学び」を定着させるには、教育現場にゆとりが欠かせない。肝に銘じる必要がある。

=2019/04/03付 西日本新聞朝刊=

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