【政治考】忖度発言、安倍1強のおごり

西日本新聞

 選挙の応援演説で、これほど露骨に、自慢げに、利益誘導を行ったと語った人は見たことがない。1日に北九州市であった福岡県知事選の集会で、下関北九州道路を巡って塚田一郎国土交通副大臣から「忖度」発言が飛び出した。時の最高権力者の安倍晋三首相、政権ナンバー2の麻生太郎副総理兼財務相の地元に絡む事業を進めるため、「私が忖度した」と語ったのだ。「私が公平性をねじ曲げました」と大っぴらに話しているようなもので、その感覚に、ただあきれるばかりだ。

 4日の国会では、その発言を西日本新聞が報道したことで「内容を思い起こし、事実と異なるとの認識に至った」と釈明。「うそを言っているとの認識で発言したわけではない」と語り、連日、発言の撤回と謝罪を繰り返している。

 「忖度」は森友・加計(かけ)学園問題で注目され、「1強」となった安倍長期政権とは切っても切れない言葉となった。森友・加計学園問題では官僚による首相への忖度が疑われ、真相はいまだに闇の中だ。こうした中で、政府の一員である副大臣が堂々とこの言葉を使うということは、政権内が緩んでいる証拠ではないか。

 野党は塚田氏の辞任を求めるが、首相は罷免を拒否している。安倍政権では、これまでも閣僚や官僚の数々の問題発言を不問にしてきた。本人が形式的に発言を撤回、謝罪を繰り返した後は、ひたすらほとぼりが冷めるのを待つ。「安倍1強」の「おごり」以外の何物でもないのではないか。

 塚田氏自身は「説明責任を果たしていきたい」と繰り返すが、なぜそういった発言をしたのか、どういう意図があったのか、本当に事実と異なるのか、疑問に答えるような説明は避けている。

 今回の発言は、この道路が本当に必要だと思って取り組む人たちの顔に泥を塗る形にもなった。仮に「事実と異なる」発言であったとしても、軽率な言動で行政の公平性に疑念を生じさせた責任は重大だ。政治責任をどう決着させるのか。国民も政権の姿勢に目を凝らしている。

=2019/04/05付 西日本新聞朝刊=