「忖度」予算に見え隠れ 下関北九州道路 専門家「配分過程の徹底検証を」

西日本新聞

 下関北九州道路(下北道路)の建設に向けた調査に国が直接乗り出し、関連事業費も倍増させたのは「地元」選出である安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相への「忖度(そんたく)」だったのか-。塚田一郎国土交通副大臣の「忖度」発言で浮上した疑念に対し、国交省幹部の多くは予算配分の正当性を強調し、予定通り調査を進める構えを見せる。しかし、ある幹部は予算配分作業が大詰めを迎えていた3月中旬、西日本新聞の取材に対し、麻生氏らへの「配慮」を示唆する発言をしていた。

 「麻生さんには逆らえない。山口出身の吉田さんの言うとおりにしないわけにもいかないしね」。3月中旬。この幹部は麻生氏と自民党の吉田博美参院幹事長の名を挙げ、下北道路への予算配分に麻生氏らの存在が影響していることをほのめかした。吉田氏は、塚田氏が北九州市での集会で「『これは総理と副総理の地元の事業だよ』と発言した」人物として挙げた実力者だ。

 その数日後、石井啓一国交相は国交省を訪れた福岡県の小川洋知事らに直接調査の方針を伝達。財政難で一度は打ち切られた国による調査が、11年ぶりに復活することが決まった。3月末には、調査費4千万円の配分を決定。福岡、山口両県などの検討会の調査を補助する形で計上していた2017年度、18年度の事業費各2100万円から倍増した。

 結果として、忖度が予算配分に影響したのか-。別の複数の国交省幹部は「首相や麻生氏、吉田氏らの顔が頭に浮かんだことはあるかもしれないが、配慮は全くない」などと全面否定。ある幹部は「配分過程を丁寧に説明すれば、疑念は晴れるだろう」と話す。

 ただ、下北道路の実現が首相らの悲願だったことは間違いない。「11年前の調査凍結後、首相は酒席で『進めよう』と言っていた」と証言する自民党衆院議員もいる。

 「利益誘導の赤裸々な証言が出た戦後初めてのケースだ」。立憲民主党の長妻昭氏は4日の野党合同ヒアリングで、下北道路の予算配分が他の公共事業と比べて公平だったかを追及していく構えを強調。国交省はヒアリングで、昨年12月20日に塚田氏が吉田氏から下北道路整備の要望を受けた際、池田豊人道路局長と担当課長が同席していた可能性があると説明した。

 五十嵐敬喜・法政大名誉教授(公共事業論)は、第三者などによる予算配分過程の検証の必要性を唱え、こう訴える。「建設すれば2千億円にも上る巨額事業だ。ゆがんだ判断がなかったか徹底して調べないと禍根を残す」

■「事業推進に迷惑」 地元北九州、発言に困惑

 下関北九州道路の新設調査の予算決定を巡り、塚田一郎国土交通副大臣が安倍晋三首相などの意向を「忖度した」と発言、撤回したことを受け、地元の北九州市では「事業の推進に迷惑」との批判の声が上がる一方、「これを機に必要性をもっと議論すべきだ」と考える市民もいる。

 「本当に迷惑な話だ」。1日夜、塚田副大臣が発言した同市での集会に参加した自民党市議は憤る。国の直轄調査は3月末に決定したばかり。「関門橋やトンネルの老朽化と災害対応で、いずれ必要となる事業だ。無駄な公共事業とのレッテルを貼られなければいいが…」と不安がる。

 一方で長年、労働組合活動に携わった同市門司区の男性(68)は「塚田氏は集会で本当のことを口にしたと感じた。人口減と行政の財政難が続く中で、3本目の道路が本当に必要なのか議論を深めてほしい」と注文を付けた。

 同市の北橋健治市長は4日の定例記者会見で「所感は差し控えるが、発言したご本人が事実と異なる、と撤回した上で謝罪している」と慎重な言い回しをし、事業の推進を引き続き国に求めていく考えを示した。

=2019/04/05付 西日本新聞朝刊=