保護者名「父」が優先、なぜ? 長崎市教委が就学通知書で促す 「見直し必要」指摘も

西日本新聞

保護者氏名欄に父の名を優先して記入するよう促す長崎市教育委員会の就学通知書(赤い四角囲みは加工して目立たせています) 拡大

保護者氏名欄に父の名を優先して記入するよう促す長崎市教育委員会の就学通知書(赤い四角囲みは加工して目立たせています)

 春は入学の季節。新小学1年生がいる家庭では準備が進んでいる頃だが、市町村の教育委員会が各世帯に届ける「就学(入学)通知書」について、長崎市内の母親(34)から疑問の声が特命取材班に寄せられた。父と母の両方がいる場合、保護者氏名欄に「父」の名を書き、入学式時に学校に提出するよう注意書きがあるという。民法は父母ともに子どもの教育に責任がある「共同親権」を認めている。なぜ父が優先なのか?

 〈親権者が父及(およ)び母の場合は父の氏名を記入してください〉

 太字の注記を見た母親は、保護者の代表には父親がふさわしい、と言われたような気がした。フルタイムで共働きし、一緒に2児を育てている。「行政が決め付けることではないと思う。それとも、私は代表としてふさわしくないのでしょうか…」

 就学通知書は、入学先の公立学校や入学日を伝えるのが目的で、書式や内容は各教委で異なる。

 九州の政令市と県庁所在地市に確かめたところ、保護者氏名欄で優先的に父の名を書くよう求めていたのは長崎市教委だけ。他教委は通知書を送付するだけで、保護者氏名の記入や提出は不要だった。佐賀市教委は「家族の形は多様化が進んでいる」。福岡市教委は「保護者名を誰にしてほしいとか、教委が求めることではない」と回答した。

 長崎市教委がいつからこの書式を取り入れたのか、不明という。父を優先する理由として「各家庭の状況を把握することで、学校が適切に対処できるようになる」「父母の氏名が混在するよりも名簿を整理しやすくなる」などを挙げるが、時代遅れの感は否めない。

 旧民法では親権者は原則父親だったが、戦後に改正された現在の民法は両親がいる場合、共同親権を原則とする。文部科学省や各学校が出す文書で、男女平等の観点から保護者を表す「父兄」という言葉が使われなくなって久しい。

 長崎市では保護者から学校に「違和感がある」との指摘が寄せられているという。同市教委学校教育課の大塚潤課長は「男女差別との誤解も招きかねず、次回から注記の削除を含めて検討したい」と述べた。

 国際的な女性の人権問題に詳しい神奈川大法学部の近江美保教授(ジェンダー論)は通知書の注記について「なぜこんな対応をしているのかと驚いた。表現や運用が時代に合わないものになっており、変更作業を急ぐべきだ」と指摘している。

=2019/04/05付 西日本新聞朝刊=

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