報酬年192万円、神社に10万円寄付…自治会への疑問次々 識者「会費支出透明に」

西日本新聞

かつて自治会長を務めた福岡県春日市の男性が昨年3月、独自に行った住民アンケートでは、自治会費の使い道についてさまざまな声が寄せられた 拡大

かつて自治会長を務めた福岡県春日市の男性が昨年3月、独自に行った住民アンケートでは、自治会費の使い道についてさまざまな声が寄せられた

 特命取材班には、自治会を巡る素朴な疑問が相次いで寄せられている。

 「私の地元自治会は会長が月々16万円、年間で192万円の報酬をもらっています」。福岡県春日市の男性は打ち明ける。

 自身も2年前まで会長を務め、報酬も得ていた。「高すぎる。減額を提案しようと考えていたけど、会長を交代することになりました」

 男性は、当時入手した市の自治会連合会の内部資料を見せてくれた。

 資料は、市内35自治会ごとに加入世帯数や月会費などを記す。自治会長の年間報酬を確認すると、60万~192万円。29自治会で100万円を超えていた。

 自治会役員は、住民がボランティアで務めることが多い。男性が所属する自治会の現会長に尋ねると「業務量や時間を考えれば妥当な額です」と説明した。

 実はこの自治会、市の指定管理者として公民館運営を担う。自治会長は公民館に常勤し、会報づくりや会議の準備に当たる。小学校の運営協議会長も兼任し、1人暮らしのお年寄りを定期訪問しているという。

 会長によると、自治会は約2400世帯が加入し、会費は月500円。市の補助金なども含め、2018年度の収入は計約2500万円に上る。ここから自治会長や役員ら計23人に約620万円を支払っている。

 確かに一定の業務量があり、事実上、行政の補完的な役割を担っている。議論が分かれるとしたら、報酬額が妥当かどうかだろう。

 「人件費が高いという声があれば、総会が是非を判断する」と会長。その総会の参加者は、住民代表である隣組長に限られる。役員の顔ぶれも役員による選考会や推薦で決まり、一般住民の意見がどこまで反映されるか、はっきりしない。

 「人口減少時代、役員のなり手が不足する中、一定の報酬を支払うという考え方は理解できる」と名古屋大の中田実名誉教授(社会学)。その上で「役員同士のお手盛りでなく、住民の声を広く聞き、みんなが納得できる金額にするべきだ」と指摘する。

      ■

 同県糸島市の北部にある自治会は、自治会費から毎年10万円を管理費として地域の神社に寄付しているという。住民から「神社の管理は本来、自治会と区別した氏子集団で行うべきでは」との意見が届いた。

 自治会費と神社費の関係を巡っては、判例がある。自治会費の一部を神社に支払った佐賀県鳥栖市の自治会に対し、佐賀地裁は2002年、「宗教上の行為への参加を強制し、憲法が保障する信教の自由に反する」と判決を出し、確定した。住民は「憲法違反だ。やめてほしいと声を上げても改善されない」と訴えた。

 自治会長は取材に対し、「地域では昔から境内で花見や祭りを楽しんできた。住民にとって神社は宗教施設でなく、コミュニティーの場だ。自治会は任意の団体であり、憲法の効力は及ばない」と反論した。

 その後、住民の意見を尊重し、3月末の総会で新年度の寄付を取りやめることにしたという。

      ■

 自治会費の必要性を訴える意見もある。糸島市の別の自治会役員経験者は「定期的に集金される自治会費は、アパートやマンションに住む際の共益費と同じだと考えている」と声を寄せた。

 賃貸の集合住宅では、共用部分に設置した電灯の交換費やごみ置き場の清掃費などを共益費でまかなう。それと同じく、公園や道路など「地域で共有する部分」の管理に自治会費が必要だというわけだ。「最近はいきなり田舎のコミュニティーに転入してきて、ルールを守らない人が増え、旧来の住民は困っている」

 自治会問題に詳しい「市民オンブズマン(大阪)」代表の井上善雄弁護士は「自治会には孤独死を防いだり、火災で助け合ったりするなど暮らしを支える役目もある。身近な組織だからこそ、民主的で透明性のある運営をし、会費の使途も分かりやすく説明するべきだ」と話した。

=2019/04/07付 西日本新聞朝刊=

「あなたの特命取材班」とは?

 西日本新聞は、暮らしの疑問から地域の困り事、行政や企業の不正告発まで、情報提供や要望に応え、調査報道で課題解決を目指す「あなたの特命取材班」を創設しました。「知りたいこと」を取材し、正確に深く報じる「ジャーナリズム・オンデマンド」に挑みます。
 知りたいことや困っていることについて、ご要望や情報をお寄せください。
ツイッターやフェイスブックの文中に「#あなたの特命取材班 」を入れて発信してください。LINEの友だち登録で取材班と直接やりとりもできます。
→詳しくは あなたの特命取材班 特設ページへ

PR

アクセスランキング

PR

注目のテーマ