子育て後とどう向き合う 山下祐介氏

西日本新聞

首都大学東京教授山下祐介氏 拡大

首都大学東京教授山下祐介氏

◆郊外住宅団地

 首都圏にいると、どうしても郊外住宅団地が目につく。地方でも移住政策として、郊外型の住宅団地の建設に取り組んでいるところも多いようだ。ターゲットは主に子育て世代。自治体は子育て支援のメニューを手厚くし、人口増加に結びつけようとしている。だがそこには罠(わな)も。自治体のサービスの良さにひかれて移住してきた人々が、子育てしている間はいい。子育てを終え、年をとってゆく中で、まちづくりにきちんと参加してもらえるか、高齢者サービスまで過度に求められるのではないかと自治体は心配する。サービスを求めて移住してきた人は、サービスの低下にも敏感なはずだ。だが行政はどこまで対応できるのか。

 平成期に人口を増やして注目される北海道東神楽町も同じような悩みを抱えていた。同町は旭川市の郊外に位置し、幹線道路沿いに新しい住宅団地ができた。旭川と比べ地価が安く、公民館もあり、子育て支援も手厚いため人口が増えた。しかし田舎暮らしがしたくて来た昔の移住者と違って、住宅の安さや行政サービスが目的で来た人たちが、まちづくりに積極的に参画してくれるかどうかは未知数である。町の幹部は「地域に参加してもらう方策を探っている」と話していた。自治体はサービスを提供するだけの団体ではない。住民が汗をかいて住みよさを達成するための媒介でもあるはずだ。

 興味深いのは、昭和30~40年代にできた古い郊外型住宅団地は高齢化が進んでいるにもかかわらず、自治が機能しコミュニティーがしっかりとしていることだ。都内で調査をした学生たちも、そう報告している。地方から上京し、住宅団地に集った人たちが「自分たちの手で、まちづくりをしよう」と取り組んだことが今も生きているのだろう。時代が新しくなればなるほど、住宅団地の自治会活動は低調となり、自治会がない所も多くなった。共働きの増加など構成する世帯の変化も大きい。こうした団地が高齢化を迎えたらどうなるのか。

 住宅団地の自治をめぐる問題は、過疎地の村よりも深刻だと思う。これから進む人口減少や高齢化に向き合うためにも、目をそらしてはいけないテーマである。

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 山下 祐介(やました・ゆうすけ)首都大学東京教授 1969年生まれ、富山市出身。九州大助手、弘前大准教授を経て2018年より現職。専門は都市社会学、地域社会学。近著は「『都市の正義』が地方を壊す」。

=2019/04/07付 西日本新聞朝刊=